光の終焉と新たな始まり
光の終焉と新たな始まり
朝陽が戦場を染める頃、バルは再び剣を手にした。空は淡い赤と紫の光で満たされ、昨日の戦いの名残は静かに霧に包まれていた。彼は心を決めていた。今日、この地に終わりをもたらすことで、自分が背負い続けてきた重荷から解放されるかもしれないと。
噂を聞きつけた戦士たちが次々と集まり、戦場の中心に立つバルを取り囲んだ。敵も味方も、その場にいた全員が彼を注視していた。ローズクォーツが双剣の柄で輝き、淡い光を放ち始めると、ざわめきが静寂へと変わっていった。バルは剣を掲げ、一歩前に出た。
「今日は、血ではなく光で戦いを終わらせる。」彼の声は低く響き、風と共に広がった。その場にいた者たちの表情が変わり、怒りと恐れに満ちていた瞳が徐々に和らいでいった。ローズクォーツの光が眩しく輝き、彼らの心の奥底に眠っていた愛と赦しの感情を呼び起こしたのだ。
光は次第に強まり、バルの体を包み込むようにして広がった。その輝きは彼の胸にある決意と葛藤を映し出し、全ての者に彼の真の姿を見せた。彼はただ戦場に立つ戦士ではなく、争いを終わらせるために選ばれた存在だった。だが、その選ばれし宿命は、彼を深い孤独へと導いていた。
その瞬間、バルは感じた。光の中で、自分の心が解放されるのを。重荷を背負い続けた日々が流れ去り、心は軽く、穏やかだった。彼の視界には、無数の戦士たちが涙を流し、剣を下ろす姿が映った。怒りと憎しみの鎖は断ち切られ、戦場は静寂に包まれた。
バルは目を閉じ、ローズクォーツの光が自らの心にも安らぎをもたらしているのを感じた。だが、その光が消えると同時に、彼の姿は徐々に薄れ、やがて消えていった。戦場の中心に立っていた双剣士の姿は、朝陽と共に幻のように消え去り、ただ薄紅色の花びらが風に舞っていた。
戦場に残った者たちはその光景を見つめながら、心に新たな思いを刻んだ。戦いの中で失われた愛と赦しは、再び彼らの中で息を吹き返したのだ。バルは去り、彼の姿は伝説として語り継がれることとなった。だが、彼が残した光は、永遠に心の中で輝き続ける。
その日から、人々は戦の前に花を捧げるようになった。それは、かつて紅の双剣士が平和をもたらした証であり、彼の存在が再び現れることを願う祈りだった。そして、花びらが舞うたびに人々は思い出すのだ。争いを終わらせる力は、自分たちの中にもあるのだと。