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フィリアの詠唱は激しさを増し

彼女の声はまるで空気そのものに命を吹き込むかのように響き渡った。彼女の体から放たれる光は、周囲を包む薄暗い遺跡の闇を払拭し、鮮やかな青白い輝きが大地を照らした。その魔力はただならぬもので、自然界の限界を超えたエネルギーが渦を巻いていた。獅子の瞳がその異常な力を察知し、鋭い視線をフィリアに向けた。


獅子は傷つきながらも誇り高く立ち、再び攻撃を仕掛けるべく身を低く構えた。その一瞬の間に、イオスは全身の筋肉を震わせて戦闘態勢を整えた。赤黒い魔法薬の効果で心臓が激しく鼓動し、耳の奥に血が流れる音が響いた。「俺が引きつける。フィリア、決めてくれ!」声は焦りと覚悟を持って伝えられた。


獅子が突進する刹那、遺跡全体が震えた。大地を揺るがすような力が、あらゆる方向から押し寄せ、冒険者たちの耳を打った。イオスはその巨体を鋭い動きで避けながら、刃を獅子の側面へと滑らせた。刃が肉を裂き、銀色のたてがみに再び火花が飛び散る。獅子は痛みを感じながらもその動きを止めることはなく、激しい咆哮を上げた。


「フィリア、今だ!」イオスの叫びは、まるで時を止めるかのように響いた。その瞬間、フィリアの杖から巨大な光の束が獅子の胸元に向かって放たれた。その光は眩いばかりの輝きを放ち、遺跡全体を包み込んだ。獅子はその直撃を受け、体が大きく揺れた。瞳が薄れていくのを感じさせるかのように、そのたてがみが赤く染まり、獅子は力を振り絞って立ち上がろうとした。


だが、獅子の動きは止まった。獅子の胸元に埋め込まれたダイヤモンドが脈動し、最後の光を放ちながら輝きを失っていった。静寂が場を支配し、フィリアとイオスの荒い呼吸だけがその空間を満たした。


「これで…終わったんだ…」イオスは力尽きたように膝をつき、その目からは熱い涙がこぼれ落ちた。フィリアもまた膝をつき、獅子の胸元から輝きを失ったダイヤモンドをそっと取り出した。それは冷たく、しかし重みを感じる石だった。彼女はその石を手に握りしめ、失われた仲間たちの魂がそこに宿っているかのように瞳を閉じて祈った。




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