「再戦、誇り高き獣との決着」
数日が過ぎ、イオスとフィリアは体力を回復し、新たな戦術と覚悟を胸に再び遺跡へと足を踏み入れた。朝もやに包まれた森の中、薄日が石造りの遺跡を照らし、その中心には誇り高き輝煌の獅子が悠然と佇んでいた。銀色のたてがみはまるで月光を宿したかのように輝き、その瞳には鋭い戦意が宿っていた。
戦いの前に、イオスは懐から小さな瓶を取り出した。瓶の中には赤黒く光る特殊な魔法薬が揺れていた。「これを飲めば、寿命が縮む…だが、今はその覚悟が必要だ。」彼は呟き、フィリアに視線を投げた。フィリアは一瞬目を閉じ、深い呼吸をしてから小さな瓶を取り出した。彼女の中にも同じ魔法薬がある。
「共に挑むわ、イオス。私たちが背負った仲間のために。」フィリアの声は震えを帯びながらも力強かった。
イオスは無言のまま赤黒い液体を一気に飲み干した。体内を駆け巡る燃えるような熱が全ての筋肉を引き裂くかのように暴れまわり、全身に鋼のような力が漲った。次にフィリアも魔法薬を飲み込むと、彼女の体が淡い青白い光を放ち始めた。魔力の波動が周囲の空気を振るわせ、人間の限界を超えた力が彼女を包み込んでいた。
「私たちならできる…!」フィリアの声には、魔力の高まりによる自信と決意が混じっていた。
獅子が低く唸りを上げたその瞬間、戦場に一瞬の静寂が訪れた。彼の瞳は鋭く、侵入者たちをじっと見据えた。そのたてがみが揺れ、誇り高い王者の威厳を示していた。イオスとフィリアは、相手の一挙手一投足を見逃さないように間合いを詰めていった。
「行くぞ!」イオスが叫び、彼らは同時に動き出した。燃えるような熱と魔力に駆動されたイオスは信じられない速度で前進し、獅子の鋭い爪をすり抜けて剣を振り下ろした。刃は獅子の銀色のたてがみに食い込み、鮮やかな火花を散らした。
フィリアも詠唱を始め、その声が力を宿し、杖の先に青白い光の矢を生み出した。彼女の放つ魔力は人間の域を超えており、周囲の空気が微かに震えるのを感じる。獅子の胸元にその矢が突き刺さり、埋め込まれたダイヤモンドが眩い光を放った。獅子は痛みに満ちた咆哮を上げ、そのたてがみが一瞬だけ紅に染まった。
「今がチャンスだ!」イオスが声を上げる。フィリアは魔力をさらに高め、次の詠唱を開始した。