「退却の決断」
輝煌の獅子が誇り高く立ちはだかり、冒険者たちの士気を粉々に打ち砕いた。銀色のたてがみが揺れるたびに、その光は戦士たちの目に恐怖を映し出し、絶望を深めていく。イオスは戦況を見極め、残ったわずかな冒険者たちを守るため、咄嗟の判断を下した。
「退却するぞ!生き延びることが第一だ!」イオスの声が響き、フィリアが驚愕の表情で振り向いた。「今退くの?このままでは全てが無駄に…」彼女の声はかすれ、涙で震えていた。
「ここで死んでは元も子もない。生きて再び挑むんだ!」イオスは傷つきながらも鋭い眼差しを向けた。彼の言葉に、意を決した冒険者たちは残された体力を振り絞り、遺跡の出口へと退却を始めた。
輝煌の獅子は彼らの動きを見逃さなかった。鋭い爪が空を切り裂き、遅れて逃げようとした者たちを容赦なく薙ぎ倒した。そのたてがみは再び血に染まり、輝きは凶悪さを増していった。冒険者たちの苦痛の叫びが響き、仲間たちの命が消えゆく様子がフィリアの胸に深く刻まれた。
しかし、イオスは立ち止まらなかった。足を引きずりながらも、彼は生き残った数名を引き連れ、闇夜の中を駆け抜けた。背後で獅子が再び咆哮を上げ、その声が彼らの恐怖を追い立てた。息を切らしながらようやく遺跡を抜け出したとき、彼らは初めて命の重みを実感した。
「次は必ず…討ち取る…」イオスは振り返り、遠く光る遺跡の影に獅子の鋭い瞳を見つけた。それは、決して忘れられない再戦の誓いとなった。