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欲望の果て

ギオンは、迷宮の最奥に鎮座するレッドダイヤモンドに手を伸ばした。その赤い輝きは、彼の内なる欲望をあざ笑うかのように脈打ち、全てを呑み込もうと誘うように燃え上がっている。彼の目は、今やその宝石にしか映らない。仲間のことも、ここに至るまでの試練も、全てはこの瞬間のために存在していたかのように感じられた。


「ついに俺のものだ……」


指が宝石に触れる瞬間、赤い光が爆発するように広間を埋め尽くし、彼の視界は一瞬で血のような赤に染まった。その光の中で、彼の中に潜む欲望が次々と現れ、まるで自分自身がそれに支配されていくような感覚が襲いかかる。


すると、ダイヤモンドの光が変わり、周囲に幾人もの影が浮かび上がった。そこにはロルフ、セラ、ビル、ルミラ――彼がこの迷宮で失った仲間たちの幻影が立っていた。彼らは静かにギオンを見つめ、無言で何かを訴えかけるような視線を送っている。


「……幻影か?それとも、お前たちの呪いか?」


だが、影たちは無言のまま、じっと彼の内面を見つめている。その視線に耐えきれなくなったギオンは、ふいに叫びを上げてダイヤモンドを握りしめた。すると、彼の脳裏に、これまで抑えてきた欲望が溢れ出し、彼の意識を塗り替えていく。


「俺は、全てを手に入れるはずだった……」


だが、ダイヤモンドの赤い光は次第に彼の体を蝕み、彼の心を侵していく。最初はただの輝きに見えていた光が、今では彼の命そのものを吸い取っているかのように感じられた。気が付けば、彼の手からダイヤモンドが消え、代わりに彼自身が赤い光となって迷宮の一部に取り込まれていく。


ギオンの最後の意識が赤い光の中に消えた時、迷宮は再び静寂に包まれた。赤い月がその姿を隠し、砂漠の夜は静かに眠りにつく。迷宮は欲望を求める者を待ち続け、また新たな冒険者がこの地に足を踏み入れる日を待ちわびていた。





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