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深淵への進撃
ビルが鏡の中に消えた後、ギオンは冷たい視線をその場に残し、迷宮のさらに奥へと足を進めた。彼の心には仲間を失ったという実感も悲しみもなく、むしろ、邪魔な存在が消え去ったことでより一層、目的に集中する覚悟が強まっていた。迷宮はさらに冷たく、暗い空気を漂わせ、まるで彼を試すかのように静寂を保っている。
通路を進むと、再び赤い光が揺らめき、彼の進むべき道を示しているようだった。だが、その光はどこか不気味で、彼の中にかすかな疑念を呼び起こす。「これが俺を惑わすための罠だとしても……レッドダイヤモンドを手にするためなら、全て飲み込んでやる」
ギオンは自らに言い聞かせ、さらに足を速めた。通路が開けた先には、巨大な石造りの広間があり、中央には血のように赤く輝くダイヤモンドが浮かんでいた。その光は彼を引き寄せるように脈打ち、彼の視線を離さない。
「ついに……ここまで来たか」
ギオンは手を伸ばし、レッドダイヤモンドを手中に収めようと一歩を踏み出した。その瞬間、彼の背後に影が動き、再び静寂が破られた。