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鏡の犠牲者
ビルが倒れ込むと、鏡の赤い光がさらに強く輝き、まるで彼の欲望を飲み込もうとしているかのように歪んだ。ギオンは、倒れたビルを見下ろしながらも、油断せずに周囲の様子をうかがった。鏡の中では、ビルの顔が苦悶に歪み、彼の内なる欲望がそのまま映し出されている。だが、その映像が次第に変化し、彼が完全に支配される様子が浮かび上がってきた。
「お前がここで命を落としても、俺には関係ない」
ギオンが冷たい言葉を吐き出すと、ビルは怨念がこもった目でギオンを睨み返した。「俺は……まだ終わっちゃいない……」
その言葉と共に、鏡の赤い光がビルの体を包み込む。彼の体がゆっくりと引き寄せられるように鏡に近づき、やがて鏡の中へと吸い込まれていった。ビルの叫びが迷宮中に響き渡るが、それもすぐにかき消され、鏡の中の光が静寂を取り戻した。
ギオンは一瞬、鏡を見つめたまま動かなかった。彼の仲間はここで消え去り、その影だけが鏡に残った。彼は冷徹にその光景を目に焼き付け、背を向けた。彼の目に映るのは、まだ迷宮の奥深くに眠る「レッドダイヤモンド」だけだった。