裏切りの兆し
ビルの不敵な言葉が迷宮の空気をさらに重くした。誰もが互いに冷たい視線を送り、警戒を解こうとしない。ギオンは、誰が味方で誰が敵なのか、ますます見極めが難しくなっていることを感じていた。しかし、ここまで来て立ち止まるわけにはいかない。欲望の迷宮は、彼らに何を求めさせ、どれだけの犠牲を強いるのか、その答えを見つけなければならない。
通路が二手に分かれる地点に差し掛かり、ギオンは短く命じた。「ここで分かれて進む。どちらかが宝を見つけたら知らせる。生きて戻れるならな」
ギオンとビルは左の通路へ、セラとルミラは右の通路へと進むことになった。分かれた瞬間、互いの姿が見えなくなり、迷宮の静寂が再び彼らを包んだ。ギオンはふとビルの方を見たが、彼の横顔には不敵な笑みが浮かんでいる。
「お前は俺を信用してないようだが、まぁそれでいいさ。信用なんてそもそもここでは役に立たない」
ギオンは冷ややかにビルを見返し、答えることなく歩を進めた。だが、その言葉が彼の心の奥底に不安を広げていく。通路の奥から、不気味な赤い光がちらついて見えた。その光は、まるで彼らを試すように揺らめき、誘うように輝いていた。