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囁きの罠
迷宮に入ると、空気はさらに冷え、異様な静寂が彼らを包み込んだ。通路には不気味な模様が刻まれ、石壁からかすかな光が漏れている。ギオンたちは慎重に歩を進めていたが、その沈黙は突然、何者かの囁き声で破られた。
「手に入れたいか……その欲望を解き放て……」
声がどこからともなく響き、彼らの耳元で囁くように聞こえる。ギオンはその声を無視しようとしたが、囁きは何度も繰り返される。彼は仲間の顔を見るが、全員が動揺を隠せない様子だった。セラは鋭い視線で周囲を見回し、ルミラは興味深そうに微笑んでいる。
「これは迷宮の罠だ。気を抜くな」とギオンが低く言うが、誰もその言葉で安心した様子は見せなかった。むしろ、彼らの心にはそれぞれの欲望が密かに膨らんでいるのを感じた。
通路はさらに奥深く続いており、どこへ進むべきか見当もつかない。突如、ロルフが立ち止まり、何かを見つめているような様子で動かなくなった。その目は虚ろで、彼の心の奥に潜む何かを見つめているようだった。