赤い月と欲望の扉
砂漠の夜、冷たい風が静けさの中に不穏な気配を漂わせている。ギオンは、背後に立つ4人の顔を一瞥した。相棒のロルフ、冷徹な剣士セラ、無口な盗賊ビル、そして謎に包まれた魔導士ルミラ。互いに冷たい目を向け合い、誰もがどこか警戒心を抱いていた。この5人は、決して「仲間」と呼べる関係ではなかった。ただ、互いの能力を利用するために集まっただけの集団にすぎない。
彼らが目指すのは「欲望の迷宮」と呼ばれる古代の遺跡。伝説によれば、この迷宮の中心には、赤い月が昇る夜にのみ姿を現す「レッドダイヤモンド」が眠っているという。その宝石には持つ者の心を映し出し、欲望を試す力があると言われている。そして、数多くの冒険者たちがその力に引き寄せられ、命を落としてきた場所でもある。
「覚悟はできているな?」ギオンが問うと、誰もが無言で頷いた。しかし、心の中で彼らは「信じていない」。それぞれが、自分以外の者が裏切る可能性を考え、警戒していた。
ギオンは無言で迷宮の入り口に向かって一歩を踏み出した。漆黒の闇が彼らを迎え入れるように、深い冷気が押し寄せてくる。それぞれが沈黙を守り、何かを堪えるようにして迷宮へと足を踏み入れた。赤い月が彼らの背後に静かに浮かび上がり、冷たい光が砂に影を落とす。