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座り心地のいい椅子に腰を下ろすと
ルカンが優しく微笑み、「いつも自分ばかり無理をしているのよ、フェルディナンド」と声をかけた。
ミブルも彼の隣で小さく笑い、「お前のしつこい交渉もありがたいけどな、たまには肩の力を抜いてもいいんだぜ」と軽く肩を叩いた。
フェルディナンドは、少し照れくさそうに微笑んだ。「俺は、ただみんなを少しでも良い条件で次の旅に送り出したくてな。それが俺の役割だと思っていた」
「そうよ。でもね、たまにはあなたも誰かに頼るべきなのよ。私たちがあなたのために力を貸すことだってできるわ」とルカンが優しく言い、彼の手をそっと握った。
その瞬間、フェルディナンドは深く感謝の念に包まれた。彼は自分の責任感と仲間への思いに固執していたが、今ここにいる仲間たちは、ただ取引のパートナーではなく、互いに支え合う大切な存在であると気づかされた。
「ありがとう、ルカン。ありがとう、ミブル。お前たちがいてくれることが、何よりも心強い」
その言葉に、三人は静かな笑みを交わし、温かい飲み物の湯気が彼らの疲れをほのかに和らげていった。