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フェルディナンドは少しも怯まず
さらに交渉を続けた。「それでも、我々もまたこの砂漠を越える仲間だ。無事にこの地を渡るためのものとして分けてもらえれば、必要に応じて手持ちの道具も提供する」
その言葉に商人は少しだけ考え込む表情を見せ、やがてフェルディナンドの真剣な目を見つめた。「…良いだろう。ただし、この香料の価値を決して軽んじるな。あんたが命の代わりに香料を選ぶ勇気があるならな」
フェルディナンドは満足げに微笑み、商人から少量の香料を譲り受けることに成功した。彼は香料の入った小瓶を手に取り、その強烈な香りを鼻で感じながら、ふと顔を上げた。
「これさえあれば、砂漠の向こうでも十分な取引ができる。俺たちが目指しているのは、この香りが引き寄せるさらなる利益だ」と、ミブルとルカンに向かって静かに告げた。
ミブルは小さく笑い、「商売人だな、お前は」と肩を叩き、ルカンもそれに微笑みで応えた。
香料を手にしたフェルディナンドの目には、既に新しい計画が浮かんでいた。