商人は最初、怪訝な顔で
フェルディナンドを見つめたが、彼がこれまで数々の冒険を成し遂げてきたことを知ると、渋々応じた。「ただし、あんたの冒険談を少しでも話してくれるなら、値引きも考えよう」
フェルディナンドは少し微笑みながら、自身の話術を駆使して過去の冒険の一部を語り、巧みに商人の興味を引き出した。やがて商人は笑いながら薬を差し出し、彼に取引を認めると、手を振って見送った。
部屋に戻り、フェルディナンドは霧除けの薬をミブルとルカンに見せ、「これで洞窟の中でも、しっかりと先が見通せる」と自信を持って告げた。二人もその効力を信じ、準備を整えた。
次の朝、フェルディナンドたちは霧深い山道を進み、魔物が封印されたという洞窟に向かって歩みを進めた。霧除けの薬のおかげで視界ははっきりしており、彼らは迷うことなく目的地へと近づくことができた。
洞窟の前にたどり着いた時、ミブルがふと口を開いた。「フェルディナンド、お前が俺たちの知恵袋だってこと、こういう時に痛感するよ」
フェルディナンドは笑みを浮かべて彼を見返し、「知恵袋であることも、冒険者にとっては立派な役割だ」と答えた。その言葉には、地道に情報を集め、計画を練り上げる彼自身の誇りが宿っていた。