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「商人の知恵袋」

「商人の知恵袋」


冷たい霧雨が降る夜、フェルディナンドはミブルとルカンと共に、廃れた宿屋の薄暗い部屋で地図を広げていた。その地図にはいくつかの赤い印がついており、それぞれがこれまでの冒険で手に入れた情報や、商人たちから聞き出した秘密の場所を示していた。フェルディナンドは地図の上に指を滑らせ、細かく記された場所を指し示しながら、次の冒険の計画を立てていた。


「俺たちが目指すのはこの地域だ。噂によれば、かつて強力な魔物が封印された洞窟があるらしいが、周辺には魔力が残っていて、普通の人間には近づくことすら難しいと言われている」


ルカンが地図をじっと見つめ、険しい顔で尋ねた。「それだけ危険だというなら、いったいどうやって近づくの?」


フェルディナンドは微かに微笑み、「だからこそ、この宿で準備を整える必要がある」と答えた。「ここに集まる商人や冒険者たちから、必要な物資や情報を事前に集めるんだ。霧雨が降っているおかげで、誰もがこの宿に足を止めているだろうし、交渉するには絶好の機会だ」


ミブルが首を傾げながら、「ただの宿にそこまでの情報があるもんか?」と疑問を口にしたが、フェルディナンドは微笑みを浮かべて答えた。「この宿屋には、行く先々の商人や流れ者が情報を持ち寄っては消えていく。だからこそ、ここで根気よく耳を傾けることが重要なんだ」


彼は地図を片付けると、部屋を出て宿の薄暗い廊下へと向かった。廊下にはところどころ、古いランプが灯されており、暗い中にも僅かな温もりが漂っていた。彼は耳を澄ませ、商人たちの話にさりげなく耳を傾けながら、必要な物資についても情報を集め始めた。


しばらくして、フェルディナンドは興味深い情報を得た。ある商人が特別な霧除けの薬を持っているらしいのだ。それは、この地域特有の魔力を帯びた霧の中でも視界を確保できる代物で、洞窟に近づくには絶対に欠かせないものだった。


彼はその商人のもとに向かい、低い声で話しかけた。「その霧除けの薬、譲ってくれないか?」


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