彼らは洞窟を出て町へ戻り
フェルディナンドは手際よく石を加工できる職人の元へと向かった。その職人は、石の魅力を最大限に引き出すことで有名だったが、その分プライドも高く、簡単には受け入れないことで知られていた。
フェルディナンドが幻影石を見せると、職人は無言でしばらくそれを見つめた後、鼻を鳴らして言った。「珍しい石だな。だが、この石を扱うには、並々ならぬ技術が必要だ。もし失敗すれば、ただの石ころになるが、それでも構わないか?」
フェルディナンドは微笑みを崩さず、「この石が輝くのは、あんたの腕を信じているからだ」と答えた。その一言が職人の心を動かしたのか、彼はわずかに頷き、慎重に幻影石を手に取って作業を始めた。
数日後、加工を終えた石はまるで宝石のような輝きを放ち、見る者を圧倒する美しさを誇っていた。フェルディナンドがその完成品を手にした時、その小さな石がどれほどの価値を持っているかを改めて実感した。
彼は貴族たちの集まる夜会へと向かい、幻影石を身に着けたまま人々の間を歩いた。案の定、青白い光を放つその石は注目を集め、ある貴族が興味津々に近づいてきた。
「その石、どこで手に入れたのかね?」貴族は熱心に問いかけ、フェルディナンドの返答を待ちわびていた。
フェルディナンドはその目を見据え、穏やかに答えた。「これは霧の深い洞窟でしか見つからない希少な幻影石だ。このような美しさを保つためには、高度な技術と熟練の加工が必要で、失敗すれば全てが無に帰すものです」
貴族の目は輝き、その石を欲しそうに見つめていた。そして最終的に、高額な値をつけてその石を買い取ることを決めた。
取引が終わり、フェルディナンドは重たい金貨の袋を手にし、ルカンとミブルに向かって満足げに微笑んだ。