「幻影石の取引」
「幻影石の取引」
昼下がりの陽射しが、フェルディナンドたちの足元に影を落としていた。彼らは、町から少し離れた岩場の洞窟に向かって進んでいた。洞窟の中には、特定の月齢の時だけ光るという希少な石「幻影石」が眠っているという噂を耳にし、彼らはその収集に向かっていたのだ。
「本当にそんな石があるのか?」ミブルが眉をひそめて尋ねた。
フェルディナンドは軽く笑みを浮かべて、「あるかどうかは行ってみないと分からないが、話が本当ならばその価値は計り知れない」と答えた。彼の表情にはどこか余裕があり、その言葉にルカンも頷き返した。「私も聞いたことがあるわ。幻影石は、まるで夜空に輝く星のように青白い光を放つって」
彼らが洞窟にたどり着いた時、そこは薄暗く、奥へ進むほど冷たい空気が肌を刺した。足元には苔が生い茂り、時折、湿った風が吹き抜ける。フェルディナンドは慎重に洞窟の奥へと進み、壁に浮かび上がる青白い光に目を奪われた。
「これは…!」ルカンが思わず声を上げた。
洞窟の中ほどで、いくつもの石が壁に埋め込まれており、青白く美しい光を放っていた。それは確かに、まるで夜空に散らばる星のようであり、石の一つひとつが冷たい光を纏って彼らを照らしていた。
フェルディナンドはその一つを慎重に剥がし取り、手のひらでそっと光を確かめた。「これが幻影石だ。手に取ると、まるで自分がその輝きの中に吸い込まれそうな感覚になるな」
ミブルが興味深そうに石を見つめ、「これでいくらになる?」と問いかけた。
「そのまま売れば確かに価値はあるが、加工することでその価値は何倍にもなる」フェルディナンドはその青い光をじっと見つめ、口元に微笑みを浮かべた。「貴族や金持ちがこういうものに目がないのは、いつの時代も変わらないさ」
ルカンもその言葉に納得し、フェルディナンドに託すような視線を向けた。「あなたが思うようにしてちょうだい。あなたの目利きにかかれば、この石もただの光る鉱石じゃなくなるはずだから」