表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

351/391

「幻影石の取引」

「幻影石の取引」


昼下がりの陽射しが、フェルディナンドたちの足元に影を落としていた。彼らは、町から少し離れた岩場の洞窟に向かって進んでいた。洞窟の中には、特定の月齢の時だけ光るという希少な石「幻影石」が眠っているという噂を耳にし、彼らはその収集に向かっていたのだ。


「本当にそんな石があるのか?」ミブルが眉をひそめて尋ねた。


フェルディナンドは軽く笑みを浮かべて、「あるかどうかは行ってみないと分からないが、話が本当ならばその価値は計り知れない」と答えた。彼の表情にはどこか余裕があり、その言葉にルカンも頷き返した。「私も聞いたことがあるわ。幻影石は、まるで夜空に輝く星のように青白い光を放つって」


彼らが洞窟にたどり着いた時、そこは薄暗く、奥へ進むほど冷たい空気が肌を刺した。足元には苔が生い茂り、時折、湿った風が吹き抜ける。フェルディナンドは慎重に洞窟の奥へと進み、壁に浮かび上がる青白い光に目を奪われた。


「これは…!」ルカンが思わず声を上げた。


洞窟の中ほどで、いくつもの石が壁に埋め込まれており、青白く美しい光を放っていた。それは確かに、まるで夜空に散らばる星のようであり、石の一つひとつが冷たい光を纏って彼らを照らしていた。


フェルディナンドはその一つを慎重に剥がし取り、手のひらでそっと光を確かめた。「これが幻影石だ。手に取ると、まるで自分がその輝きの中に吸い込まれそうな感覚になるな」


ミブルが興味深そうに石を見つめ、「これでいくらになる?」と問いかけた。


「そのまま売れば確かに価値はあるが、加工することでその価値は何倍にもなる」フェルディナンドはその青い光をじっと見つめ、口元に微笑みを浮かべた。「貴族や金持ちがこういうものに目がないのは、いつの時代も変わらないさ」


ルカンもその言葉に納得し、フェルディナンドに託すような視線を向けた。「あなたが思うようにしてちょうだい。あなたの目利きにかかれば、この石もただの光る鉱石じゃなくなるはずだから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ