ルカンの輝くドレス
乾いた街路に西日が差し込み、夕暮れの空が黄金色に染まり始めていた。フェルディナンドは、町の華やかな商業地区の一角に立ち、周囲を見渡していた。ミブルとルカンが背後で待っている中、彼は少し離れた店先にかかる一着のドレスに視線を定めた。そのドレスは、上品な青の光沢があり、どこか古風な気品を漂わせていた。
「フェルディナンド、まさかそんなドレスを買うつもりじゃないだろうな」ミブルが不思議そうに眉をひそめた。
「ルカンが着れば、この町の貴族たちの目を奪うに違いない」フェルディナンドが自信に満ちた表情で答えると、ルカンも驚いて彼を見つめた。「私は冒険者だし、こんな華やかなドレスなんて、似合わないわ」
フェルディナンドは微笑み、柔らかな声で言った。「いや、ルカン。君はこのパーティの一員であり、その美しさが君の武器だ。外見だけでなく、君の存在自体が場を変える力を持っている。その力を使って、今夜は一つの舞台を演じてほしいんだ」
ルカンは少し照れたように目を伏せたが、彼の言葉には不思議な説得力があった。彼女は頷き、フェルディナンドがドレスを購入する姿を見守った。彼はその後、二人を高級な宿へと連れて行き、ルカンがドレスに着替える時間を与えた。
やがてルカンが現れると、フェルディナンドとミブルは思わず息を呑んだ。彼女の姿は、まるで夜空に輝く一番星のようだった。ドレスの光沢が彼女の黒髪に映え、その立ち姿には気品が宿っていた。