200人の冒険者たち
月光に照らされた荒涼とした大地には、静かに集まる影があった。それは、この異世界の各地から集められた200人もの冒険者たち。剣士、魔法使い、弓使い、さらには見習いの若者まで、それぞれが異なる技能と目的を持ちながら、ひとつの共通の目標に向かってここに立っている。皆が追い求めるのは「精霊の魔石」。そして、それを持つとされるダゴズを討つために命を賭けているのだ。
その冒険者の中でも、ひときわ目を引くのはリックの隣に立つウラキという男だった。彼は短い黒髪を持ち、冷静で鋭い眼差しをたたえている。リックとは旧知の仲であり、幾度も共に戦場を駆け抜けてきた仲間である。ウラキは快活な笑みを浮かべつつも、その瞳には深い影が差している。長年の戦闘経験からくる冷静さと、未だに癒えぬ過去の傷が、彼の瞳に複雑な色を宿らせていた。
「お前もここまで来たんだな」と、ウラキがリックに向けて低く語りかける。リックはその言葉に、力強く頷き返す。「ああ、ウラキ。お前も変わらないな」と、穏やかな口調で応える。
ウラキは軽く笑みを浮かべ、「この戦いが終われば、俺たちも過去を振り払うことができるかもしれないな」と、目の前の大地を見つめながら呟いた。その言葉にリックもまた、目を細めて空を見上げた。「過去は変わらなくてもいい。俺たちがここで何を成すか、それが全てだ」と、彼は力強く言葉を返す。
その瞬間、地面には微かな震動が伝わり始めた。遠くの大地の向こうから、まるで地の底から響くかのような低い轟音が彼らの耳に届いてくる。その音は、徐々に強くなり、辺りに張り詰めた緊張が漂ってきた。冒険者たちは皆、身構え、それぞれが武器を構えて待機した。近づいているのは、ダゴズの軍勢だったのだ。
「いよいよだな…」ウラキが短く言い、リックも剣を握りしめた。彼の目の前に広がる夜の闇には、これからの戦いの先行きが待っている。そして、その先には、精霊の解放という大いなる目標があるのだ。