魔石の伝説
この世界には、4つの月が浮かんでいる。青、赤、白、そして淡い緑。それぞれが異なる色の輝きを放ち、夜空に幻想的な光の交響曲を描き出していた。青い月が高く上がる時、赤い月は低く傾き、白と緑の月がその間を静かに漂う。その光景はまるで夢の中に迷い込んだかのようで、現実の世界であることを忘れさせる。
異世界に広がるこの夜の景色の中で、今、ひそかに囁かれている噂がある。「精霊の魔石」という名のその宝物。かつて妖魔王が地球から奪い、この異世界に隠したとされる魔石は、持つ者に精霊を従える力を与えるという。だが、それはただの噂ではなく、今もなお魔物の一族によって護られている。そして、その魔石は、彼らの次代を担う者、ダゴズという名の若き魔物の孫の手に委ねられていた。
ダゴズの手にあるその魔石は、精霊たちの意思を封じ込み、自然そのものの力を従えさせる。かつては人々に恩恵を与えていた精霊たちも、この魔石の力によって冷酷な存在へと変えられてしまったという。
24歳のリックは、遠い異世界からこの伝説を聞き、精霊の魔石を解放するために立ち上がった。彼の髪は漆黒で、鋭い眼差しには静かな覚悟が宿っている。彼は幼いころに故郷を魔物に襲われ、愛する家族と仲間を目の前で失った苦い過去を抱えていた。その傷は今も消えぬまま、彼の中で怒りと悲しみを燃やし続けている。彼の相棒である剣は、そんな彼の気持ちを反映するかのように、夜の闇の中で鈍い光を放っていた。
「精霊の魔石を解放する…その力を俺たちの手で取り戻すんだ」リックは夜空を見上げ、月光に照らされながらそう誓った。この冒険は、彼にとって過去を清算し、新たな未来を切り開くための道だった。