その時、ダリオの胸に突然
、これまで抑えてきた疑念が過ぎる。「この石を手に入れた先に、何があるのか?」その問いは、彼の心の奥底に潜んでいたが、今この瞬間になって顔を覗かせた。ここまで戦い抜いてきた理由、それが一体何だったのか。自分自身でもはっきりと答えられない、深い渦のような思いが彼の心を支配する。
そのわずかな隙を見逃さず、男は再び襲いかかってきた。ダリオは反射的に構えを取るが、動きが鈍り、かろうじて攻撃を受け流す。しかし、男の次なる攻撃が彼の脇腹を掠め、鋭い痛みが走る。
「迷ったな、ダリオ。そんな迷いがある限り、お前にこの石はふさわしくない」男は嘲るように笑い、冷酷な一撃を加えようとする。だが、その瞬間、ダリオの目に再び冷たい決意が宿った。彼は自らの胸に浮かんだ疑念を振り払い、この場で命を賭ける理由を思い出したのだ。
「俺には、背負ってきたものがある。それを…ここで証明するために!」ダリオの叫びと共に、彼は再び男に向かって突進する。その一撃には彼のすべての決意と怒りが込められ、闇の中で鋭く光る刃が男の胸元を貫いた。
男は一瞬目を見開き、冷たく笑いを浮かべながら地面に崩れ落ちた。手から「ブラックオニキス」が滑り落ち、その冷たい輝きが闇の中で淡く揺らめいている。ダリオはその石を静かに見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。
指先が石に触れた瞬間、彼の胸に新たな重みがのしかかる。だが、その感覚はこれまでとは違い、何か冷たいもので包まれているようだった。果たして、これが彼の求めてきた力なのか――ダリオはその答えを見つけることができず、ただ静かに石を手に取った。
その冷たさが、彼の皮膚を通して魂にまで染み込んでいくようだった。