ブラックオニキスが欲しいというのは
ただの欲望ではないようだな」男が嘲るように言い放つ。その言葉はダリオを挑発し、彼の内に眠る闇の部分を刺激する。だが、ダリオはその挑発に乗ることなく、冷静なまま男の動きを見極め、さらに一歩近づいた。
周囲の冒険者たちは息を呑み、その場に釘付けになっていた。彼らは二人の激しい戦いに息を潜め、一瞬でも目を逸らすことができない様子だった。黒市全体が凍りつき、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥っていた。
その時、ダリオは見えない何かを感じ取った。男の動きがほんの一瞬、わずかに緩んだのだ。その隙を見逃すことなく、ダリオは素早く接近し、相手の防御を突き破るように一撃を放った。その刃が男の胸元をかすめ、彼の手から「ブラックオニキス」が滑り落ちる。
石が地面に落ちると、周囲には緊張が走った。誰もがその石に向けて殺気立ち、ダリオもまたその場から目を離さずに石を見据えている。しかし、次の瞬間、男は再び立ち上がり、冷笑を浮かべながら石に手を伸ばした。
「まだ終わっていない。お前に石を渡すつもりはない」
男の言葉と共に、再び激しい戦いが繰り広げられた。ダリオは全ての力を振り絞り、男の一撃一撃を受け流しながら、再び石に向かって突き進む。その姿は冷たい闇を切り裂く光のようで、彼の決意が全身から溢れ出ているかのようだった。