ダリオはその言葉を無視し
男の隙を狙うようにじっと様子を伺っていた。だが、男もまた冷静であり、その瞳には計り知れない策略が潜んでいる。互いの間に重苦しい沈黙が流れ、冷たい風が二人の間を切り裂くように吹き抜けた。ほんの一瞬の気の緩みが命取りになる、この場には言葉の余裕などない。
「欲しいのか、この石が」と男が囁くように言葉を放った瞬間、ダリオは意を決し、無言のまま一歩を踏み出した。その動きはまるで影のように速く、冷酷さすら帯びている。しかし、その刹那、暗闇から放たれた刃が彼の行く手を阻む。ダリオは咄嗟に身を翻し、放たれた刃を躱すと、即座に反撃の体勢を整えた。
「邪魔だ…!」彼は低く呟き、鋭い目で新たな敵を睨みつける。冒険者たちが次々と現れ、彼の前に立ちはだかり、彼の手に渡るのを阻止しようとする。彼らの目には、欲望と狂気が宿り、全員が「ブラックオニキス」を奪おうと血走っていた。ダリオは迷わずに、彼らを退けるために冷酷な一撃を繰り出す。もはやここには、慈悲も、迷いも存在しない。
彼が一人また一人と倒していく中、黒市の冷たい闇がさらに深く沈み込むように、緊張が一層高まっていった。倒れゆく者たちの無念の叫びが、闇に溶け込む。ダリオの目には、もはやただひとつ、「ブラックオニキス」への執着のみが宿っていた。
その時、彼の前にふいに現れたのは、冷笑を浮かべた「コブラの一派」の男だった。男は静かに石を掲げ、ダリオを見下ろすように言った。
「これが欲しいのか?だが、お前に触れる資格があるか…見せてもらおう」
挑発的なその言葉に、ダリオは冷たい怒りが胸の内で渦巻くのを感じた。しかし、その怒りを抑え、ただ一歩ずつ、確実に男に近づいていく。