影と闇の追跡
漆黒の夜が、黒市全体に張り詰める緊張を一層濃くしていた。冒険者たちは「ブラックオニキス」を巡り、互いの存在を押しのけるように駆け回り、冷酷な殺意が至る所に渦巻いている。その石を手にすることで得られる力の誘惑に駆られ、彼らの目は血に飢えたようにぎらついていた。暗闇に紛れる者、罠を張り巡らせる者、そして不意打ちの機会を狙う者――黒市の一角はまるで密猟者が集う沼地のように荒れ狂っていた。
ダリオは冷たい視線で周囲の動きを見据え、刻一刻と変わる状況を読み取ろうとしていた。石を手に入れるには、一瞬の油断も許されない。そして、周りには見知った顔が潜み、かつて共に戦った者たちが敵として立ちはだかる。その一人一人に宿る暗い執着が、黒市の冷たい霧に染みついているのを彼は肌で感じていた。
突然、背後から素早い影が迫り、ダリオは反射的に体を低くし、身を翻してその一撃をかわした。相手の顔がわずかに見え、かつての仲間であったリースであることに気づく。だが、その顔には友情の面影など微塵もなく、ただ一心に自分の欲望を満たすことだけに目がぎらついていた。
「リース…お前もこの石に取り憑かれてしまったのか?」ダリオが冷たい声で問いかけると、リースは低い笑みを浮かべ、言葉を返した。「それがどうした?ここにいる全員が、自分のために命を賭けてるんだ。お前だってそうだろう、ダリオ」