次の瞬間、ダリオは素早く動き
包囲を破るべく反撃に出た。鋭い一撃が次々と敵を捉え、彼の動きはまるで影のように速く、周囲の冒険者たちを圧倒していく。その姿はまるで冷たい刃そのもので、彼の存在が一種の恐怖を漂わせる。
そして、彼が敵を打ち倒し、再び「ブラックオニキス」へと歩み寄ろうとしたその時、遠くから何者かが叫び声を上げた。その声に振り向くと、ラウラが再び現れ、彼に向かって歩み寄ってきた。彼女の表情には、憎悪とも悲しみとも取れる感情が浮かんでおり、その目は彼をまっすぐ見据えていた。
「ダリオ、あんた…なぜここにいる?」ラウラの声は冷たく震えていた。
ダリオは彼女の問いに一瞬の沈黙を挟み、無表情で言葉を返した。「お前と同じさ、俺もまたこの石が必要なんだ。それだけだ」
ラウラはその答えに納得するような素振りを見せず、少しずつ距離を詰めてきた。「本当にそれだけ?あんたの目に映るのは、ただの欲望だけなの?」
その言葉が、ダリオの心に鋭く突き刺さる。彼は一瞬だけ自分の心に疑問を抱き、過去の選択や信念が頭の中でちらついた。しかし、次の瞬間には再び冷静さを取り戻し、彼女の言葉を跳ね返すように静かに答えた。「俺にとって、過去も未来も、この石にかかっている。それが分からないなら、ここにいるべきじゃない」
彼の冷たい返答に、ラウラは一瞬顔を歪めたが、すぐにその表情を引き締めた。「いいわ、それなら…私も自分のために戦うだけよ」
その言葉を最後に、二人の間には再び冷たい静寂が訪れた。彼らは互いに背を向け、それぞれの目的のために再び闇の中へと歩き出した。その足音が遠ざかるにつれ、黒市の中心で繰り広げられる戦いは一層激しさを増し、まるで夜そのものが牙を剥くように、冷たい殺意が漂っていた。
ダリオは自らの胸に宿る決意を再確認し、次なる戦いに備えた。彼の耳には、かすかに風が吹き抜ける音が聞こえ、その音が暗闇の中で静かに消えゆく。