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自分の背後で何かが変わった気配を感じた。
振り返ると、ラウラがまだそこに佇んでいたが、その目には先ほどとは異なる、何か強い決意が宿っているように見えた。
「ダリオ…もしあなたがその石を手に入れたら、何をするつもりなの?」彼女は問いかけるように、静かに、だが確かな口調で言葉を発した。
ダリオは一瞬だけ考えたが、すぐに目を細め、冷淡に答えた。「俺の目的は変わらない。過去を清算するだけだ」
彼の言葉に、ラウラは微かに頷き、再び静かな表情を取り戻した。「そう…ならば、そのために戦うのね」
ダリオは返答することなく、その場を歩き出した。だが、彼の胸の奥底には何か引っかかるものがあった。彼は無意識のうちに拳を握りしめ、深く息を吐き出す。彼が目指す「ブラックオニキス」は、すぐそこにあったが、その石に辿り着くまでの道のりは、予想以上に険しく、冷たい闇の中で再び彼を試しているかのように感じられた。
遠くで、黒市の中心部に集う冒険者たちが再び動き始めていた。ダリオはその場に加わるため、冷たい闇の中を静かに歩みを進め、まるで孤独な影のようにその場を駆け抜けていった。