欲望の渦と消えぬ決意
黒市の中心に渦巻く狂気は、夜の静寂に包まれて一層不気味な光景を形作っていた。深く垂れ込める霧が辺りを包み、遠くには数匹の野良犬が虚ろな目をして逃げ去る影が見える。冒険者たちの間に漂う緊張感は、夜の闇を貫き、黒市の周辺すらも冷たい殺気で満たしていた。
「ブラックオニキス」――この石の持つ力が真実か、あるいはただの幻に過ぎないのか。それを確かめたい、手に入れたいという欲望が、集まった冒険者たちの心に冷酷な火を灯している。石が光を放つたび、彼らの表情には新たな野心と狂気が宿っていくように見えた。その眼差しはまるで、全てを飲み込む深淵のように暗く冷たかった。
ダリオは闇の中でじっと息を殺しながら、周囲の様子を窺っていた。冷たく張り詰めた空気の中で、かすかな足音や息遣いが響くたびに、彼の神経が研ぎ澄まされていく。この黒市で「ブラックオニキス」を手に入れることができれば、彼は過去の自分を清算し、新たな一歩を踏み出せると信じていた。しかし、彼にとってそれは単なる欲望だけではなく、過去への復讐でもあった。裏切られた記憶が彼の心に鋭い棘のように突き刺さり、痛みを伴って彼を前へと駆り立てる。