ダリオの呼吸が徐々に荒くなり
心臓が大きく鼓動を打つのが聞こえる。
ここで気を抜けば命取り、そして、相手の一瞬の隙を突けば自分が優位に立つかもしれない。そう思いながら、彼は細い霧のベールの奥にうごめく影を一瞬だけ捉えた。
次の瞬間、ダリオは体を低くして敵の方に飛びかかり、鋭いナイフを一閃した。相手も驚く間もなく反撃に出るが、彼の目には恐怖が浮かび上がっていた。二人は瞬く間に互いの刃を交わし、汗と血が霧の中に散る。だが、ダリオは冷徹に相手の隙を見つけ、その腕を深く斬り裂くと、相手は呻き声を上げて崩れ落ちた。
「容赦ないな、ダリオ」レイラードが冷笑を浮かべながら呟く。しかしダリオは一言も返さず、ただ素早く次の標的を探して周囲を見渡した。彼の心の中には、もはや恐れは無く、ただ生き残るための冷たい決意が満ちていた。
その時、黒市の中心部から再び「ブラックオニキス」を手にした「コブラの一派」の男が、群衆を嘲るように高笑いを放った。その笑い声は闇に響き、冒険者たちの心をさらに掻き立てるようだった。男は言葉を失った冒険者たちを見渡しながら、声を張り上げて言った。
「ほら、どうした?この石を手に入れたければ、かかって来い。だが…ただし、命を賭ける覚悟のない者には、この石は手に入らんぞ!」
その声に、冒険者たちは一斉に動き出した。全員が石を奪おうと狂ったように前へ進み出し、再び黒市は激しい戦闘に飲み込まれる。ダリオもその中で動きを止めることなく、次々に襲いかかってくる者たちを退けるため、鋭い反射神経でかわし、時には素早く刃を走らせた。彼の体は筋肉と反射が生む動きに応え、周囲の殺気を読みながらその場を生き抜いていた。