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闇に咲く血の駆け引き
漆黒の夜が、黒市の上空に重くのしかかる。街の外れに広がるこの取引の場には、陰惨な緊張感が張り詰め、命をかけた狂気と欲望が渦巻いていた。先ほど放たれた一発の銃声が、まるで宣戦布告の合図のように場を裂き、冒険者たちは次々と己の野心と恐怖に駆られ、周囲に敵意を剥き出しにしながら立ち回っていた。
ダリオは、視線を鋭く張り巡らせ、荒れ狂う黒市の戦場で一瞬たりとも気を緩めることなく、その場に身を潜めていた。彼のすぐ近くには、互いに冷徹な視線を交わしながら背中合わせに立つレイラードの姿があった。敵か味方かも分からぬ状況で、ほんの少しの信頼も寄せられないが、いまはこの無言の同盟が唯一の防衛線であった。
「ダリオ、すぐ横だ。気を付けろ…」レイラードが低く呟き、微かに指をさす。ダリオもまた即座に反応し、音のする方角に視線をやった。霧の合間から、何者かが忍び寄る気配がする。光さえ吸い込む闇の中で、相手の動きを見定めるのは至難の業だが、身に纏う鋭い殺気だけは確かに感じ取れた。