その問いにダリオは言葉を失い、しばらく沈黙が続いた。
その間に、黒市の支配者たちは着々と取引の準備を整えている。彼らはまるで闇に染まる影のように立ち、無言で冒険者たちを見下ろしていた。まるで、全てを見通すかのような冷徹な目で。ダリオはその視線を感じ、どこか胸の奥で息苦しさを感じた。
やがて、取引の場に緊張が走り、黒市を仕切る「コブラの一派」の男が一歩前に出てくる。そして、静かに布を持ち上げ、再び「ブラックオニキス」をその手に掲げた。黒い石は無骨な光を放ち、周囲の冒険者たちの眼差しを一層強く引き寄せた。その瞬間、誰かが思わず動き出し、全体の緊張が弾け飛ぶような気配がした。
「取引は、今から始まる」
その一言が告げられると、冒険者たちは一斉に動き出した。取引と称した闇の競り合いが、今ここで命を賭けたものへと変わり、彼らは互いに牽制し合い、策を巡らせ、必死に相手の隙を探っていた。そこには一瞬の油断も許されない、命懸けの駆け引きが繰り広げられていた。ダリオは一歩も引かず、冷静に相手の動きを見極めようとしていた。
その時、突然、取引の場に銃声が響き渡った。どこからか放たれた一発の銃弾が、冒険者たちの間に嵐のような騒動を引き起こした。「誰だ!」と叫び声が飛び交い、皆が警戒を強める中、隙を狙った者が次々と動き始める。ダリオは瞬時に身を翻し、レイラードと背中合わせになって警戒態勢を取った。レイラードもすぐに反応し、冷静に辺りを見渡していた。
「結局、一緒に行動する羽目になったな」と、レイラードが軽く皮肉を込めて囁いたが、ダリオはそれに答えることなく、ただ一層の警戒を強めた。二人は一時的に協力関係を築き、周囲に散らばる敵意に対抗しようとしていた。取引の場は、もはや誰が味方で誰が敵かも分からない混沌と化していた。
やがて、「コブラの一派」の男が再び前に進み出て、冷たく笑いながら言った。「さあ、誰が生き残るか見物だな」その言葉に、冒険者たちの間にさらなる緊張が走り、命を賭けた争奪戦の火蓋が切られた。
こうして、暗闇に包まれた黒市での激しい戦いが幕を開け、ダリオは冷徹な闇の中で生き延びるため、己のすべてを賭けて戦う覚悟を決めたのだった。