■172
ある日、異世界での冒険の合間に、零、麻美、そして守田は小さな村に立ち寄っていた。そこは、見慣れた町とは違い、少しのどかな雰囲気が漂っていた。村の市場を歩いていると、一匹の奇妙な動物が目に留まった。それは、毛むくじゃらの、まるで猫とリスが混ざったような生物で、その尻尾がふわふわと揺れていた。
「ねえ、あの生き物、見たことあるか?」零が目を細めてその生物を指さす。
麻美も少し驚いた表情を見せながら、「ええ、でも…猫でもリスでもないわね…?かわいいけど。」と笑みを浮かべた。
すると、その生物が急に跳ね上がり、麻美の腕にぴたりと飛び乗ってきた。「きゃっ!びっくりした!」麻美は驚きつつも、その生き物をじっと見つめた。小さな目がキラキラと光り、まるで遊びたがっているようだった。
「おい、麻美、それはお前に懐いたみたいだぞ。」零が笑いながら、ちょっと羨ましそうにその光景を見ていた。猫好きの彼としては、そのふわふわの生物に少し心が惹かれていたのだろう。
しかし、その瞬間、守田が冷静な顔で口を開いた。「気をつけろ。その生物は…異世界では『フラッフィ』と呼ばれる。見た目はかわいいが、触ると…」
その言葉が終わる前に、フラッフィが急に麻美の肩から零の方へと飛び移り、彼の頭に乗っかった。
「うわっ、なんだこいつ!」零は驚いてバランスを崩し、その場に座り込んでしまった。フラッフィはそのまま、彼の頭の上で丸まって寝るような態勢に。
「…いや、特に危険なことはない。」守田はすっとぼけた顔で続けた。「ただ、非常にくすぐったがりで、しかも一度懐くとしばらく離れない。だから…まあ、しばらく我慢するんだな。」
零は肩をすくめながら、「それを先に言えよ…!」と苦笑いした。
麻美はそのやり取りを見て、堪えきれずに笑い出した。「ふふ、零君、今日はフラッフィの新しい友達になったのね。」
「友達っていうか…くすぐり地獄の相手になった感じだぞ。」零は頭の上で眠り始めたフラッフィに困惑しながらも、どこかほっとしたような表情を浮かべていた。
その日は、そのまま零の頭にフラッフィがくっついたまま、3人は村を後にした。冒険の途中に、こんな小さな出来事で笑い合える時間も、悪くないと3人は心のどこかで感じていた。