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■169

巨神が消滅し、谷全体が静まり返る中、零、麻美、守田の三人は、しばらくその場に立ち尽くしていた。彼らの周囲には、風も雷もない、まるで異世界にでも迷い込んだかのような静けさが広がっていた。巨神との壮絶な戦いで疲れ切った体は、すぐには動くことができなかったが、三人の心の中には確かに勝利の余韻が広がっていた。


零は、まだ少し震える手で剣を握りしめたまま、ゆっくりとそれを鞘に収めた。炎の力が消えた今、その剣はまるで静かに眠る獣のように、落ち着いた光を放っていた。彼の心臓はまだ速く打ち続けていたが、ようやく息を整え始めた。


「終わったんだな…本当に…」零は深く息を吐き出し、その言葉が静かに谷に響いた。


麻美も肩で息をしながら、震える手で自分の胸に手を当てた。彼女の目には、安堵の涙が浮かんでいたが、同時に、全てが終わったわけではないことを理解していた。彼女はゆっくりと零に歩み寄り、そっと彼の腕に触れた。


「零君…私たち、本当に勝ったのよね…でも、こんなに大きな戦いを乗り越えたのに、なんだかまだ終わっていない気がするわ…」


麻美の声には不安と安堵が入り混じっていたが、その背後には次なる戦いに向けての覚悟も感じられた。彼女は零の顔を見上げ、その瞳の中に強い決意の光を見つけた。


「そうだな…まだ終わりじゃない。でも、これで確実に次に進むための力を手に入れた」零は麻美の手を軽く握り返しながら、自分たちが得たものの重みを噛み締めていた。


一方で、守田は拳を握りしめたまま、遠くを見つめていた。彼の目には鋭い光が宿っており、巨神を倒したばかりというのに、次なる戦いへの準備をすでに始めているようだった。彼は体中に痛みを感じながらも、それを無視して強く前を見据えていた。


「これでまた一つ、俺たちは強くなったな。だが、次はもっと強い敵が待っているはずだ。今のうちに体を休めておかないと、次の戦いで倒れちまうぞ」守田は苦笑いを浮かべながら、零と麻美に声をかけた。


零は頷きながら、その言葉に同意した。「そうだな…だが、その前に、この戦いで得たものを確かめないと」


零は再び巨神が倒れていた場所へとゆっくり歩み寄った。そこには、かすかな光を放つ小さな石が埋もれていた。その石は、まるで巨神の力を凝縮したかのように脈動しており、わずかに輝いていた。それは巨神の残した「魔石」だった。


「これが…巨神の魔石か」零はその石に手を伸ばし、慎重に拾い上げた。石は驚くほど冷たく、重々しい感触が手のひらに伝わってきたが、その中には計り知れない力が眠っていることが感じられた。


麻美もその魔石を見つめ、驚きの声を漏らした。「こんなに小さな石に、あれほどの巨神の力が宿っているなんて…信じられないわ。でも、この力があれば、次の戦いも乗り越えられるはずよね」


「そうだ、この魔石を使えば、俺たちはさらに強くなれる」零はその石をじっと見つめた。その中には、まるで未知の力が呼びかけてくるかのような感覚があり、彼はそれをしっかりと感じ取っていた。


守田もその魔石に目をやりながら、口元に笑みを浮かべた。「これで次は空間魔法を手に入れるか…さあ、準備が整ったなら、次に行くぞ」


彼らはそれぞれ魔石の力に新たな期待を抱きながら、ゆっくりと立ち上がり、次の冒険に向けて準備を整え始めた。


空は再び澄み渡り、雷鳴の谷はかつての静けさを取り戻していた。だが、この谷に流れていた雷の力は、確実に零たちの中に宿った。これまで数々の試練を乗り越えてきた彼らだったが、この瞬間から、さらなる大きな力と共に旅を続けることとなった。


「よし、行こうか…次の試練が待っている」零は魔石をしっかりと握りしめ、前を見据えて言った。

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