■167
零は一瞬の迷いも見せず、足元の大地が崩れ落ちる中で巨神に向かって突進した。
剣を握る手には汗がにじみ、そのまばゆい炎が巨神の黒い瞳に照り返っていた。
彼は決して諦めることなく、目の前の圧倒的な力に立ち向かう決意を固めていた。
「必ず…何か弱点があるはずだ!」零は自らに言い聞かせ、巨神の鋭い棘をかわしながら剣を振り下ろした。
しかし、剣の炎は巨神の硬質な岩の表面に触れるや否や、まるで水が石に吸収されるかのようにその力を失ってしまう。
「くそ…こいつ、まるで岩そのものが生きているかのように硬い…!」零は歯を食いしばり、後退しながら再び構え直した。
しかし、その後方で麻美と守田もすでに限界に近づいていた。
麻美は全力で風の刃を放っていたが、彼女の魔法は巨神の触手に絡みつかれ、次々と無力化されていく。彼女の目には、かつてない焦りが浮かんでいた。
「こんな魔物、いったいどうすれば倒せるの…!」彼女は何度も風を巻き起こし、再び巨神を包囲しようとしたが、その触手が無数に蠢き、麻美の攻撃をあっさりと打ち消してしまう。
「おい、気をつけろ!あいつの触手に触れたら、力を吸い取られるぞ!」守田が麻美に警告を発したが、その時すでに彼自身も触手に絡み取られそうになっていた。
彼の拳が大地に打ち付けられるたび、巨大な震動が広がっていたが、巨神の体はびくともせず、守田の攻撃がまるで無意味なものに見えた。
「これじゃまるで、俺たちの攻撃が通用していないみたいじゃないか…!」守田は拳を握り直し、再び攻撃の準備を整えた。
零も同様に、すぐに再び攻撃の機会を狙っていた。
だが、次の瞬間、巨神の赤い瞳が突然一層鋭く光り、その視線が零たちをまっすぐに捉えた。
まるで彼らの心の奥深くまで見透かすかのような冷たさに、零は一瞬、動きを止めた。その瞬間、巨神の巨大な腕が空を裂くように振り下ろされた。
「避けろ!」零が叫び、全力で仲間たちに警告を発したが、その腕の動きはあまりにも速く、そして破壊的だった。
巨神の拳が大地を叩きつけた瞬間、大地が大きく揺れ、亀裂が広がり、周囲の地形が瞬く間に変わってしまった。
零たちはその衝撃に飲み込まれ、体勢を崩しながら地面に倒れ込んだ。
だが、彼らはすぐに立ち上がり、再び巨神の姿を見据えた。そこには、まだ圧倒的な力を放ち続ける巨神の姿があった。
まるで、彼らの努力がまったく通じていないかのような感覚に、彼らの心は次第に疲れ果てていく。
「こんなにも強い敵を前に…俺たちはどうすればいいんだ…?」麻美は震える声で零に問いかけたが、その瞳にはまだ戦う意志が宿っていた。彼女は仲間と共に戦うことを諦めるつもりはなかった。
「奴の弱点を探さなければ…あいつのどこかに、必ず…!」零は苦しげに言葉を絞り出しながら、再び巨神の体をじっくりと観察した。
だが、その体はまるで要塞のように硬く、攻撃を仕掛ける隙間すら見つけることができなかった。
「時間がない…!」守田も疲れ果てた声で叫びながら、再び拳を握りしめた。「でも、絶対に諦めない。俺たちは、ここでこの巨神を倒さなければならないんだ!」
零も同じ思いを抱いていた。
彼は剣を握り直し、再び巨神に向かって前進した。「そうだ…俺たちはここで止まるわけにはいかない。この戦いを乗り越えなければ、次には進めないんだ!」
その瞬間、巨神が再び動き出した。まるで全てを飲み込むかのような巨大な触手が、零たちに向かって蠢き始めた。
触手は空気を切り裂き、次第に彼らの周りを包囲し、逃げ場を失わせようとしていた。触手の動きはまるで巨大な蛇が獲物を捕らえる瞬間のように冷徹で、そして確実だった。