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■128

静寂の中、ユニコーンが近づいてくる。麻美の手に差し出された人参に、ユニコーンの目がきらきらと輝いた。その瞬間、彼女の心は期待と緊張で高鳴り、仲間たちの心も同様に揺れていた。


「うわぁ…本当に美しい。」零が感嘆の声を漏らす。ユニコーンの毛並みはまるで月明かりのように輝いており、その姿は神秘的な雰囲気を醸し出していた。麻美はその美しさに圧倒されながらも、彼女の心には信じる力が宿っていた。


「これを受け取ってくれたら、私たちは友達になれると思う。」麻美はユニコーンに向かって優しく語りかけた。人参をしっかりと差し出し、その姿勢には真剣さが滲み出ていた。ユニコーンの目が人参に向けられ、ほんの少し鼻を動かして香りを嗅いだ。


「おいしい人参だぞ。きっと君も好きだと思う。」麻美の言葉に、ユニコーンは興味を示し、彼女の方に一歩近づいた。その様子に、麻美は心が弾むのを感じた。


「さあ、受け取って!」麻美は優しい声で再度促す。彼女の心の中で、ユニコーンと友好の絆を築きたいという思いが強まっていく。


ユニコーンはしばらくの間考え込むように立ち尽くし、その後、彼女の手から人参を受け取るべく、優雅に首を伸ばした。麻美はその瞬間、息を飲む。


ユニコーンが人参を口にした瞬間、彼女の心に柔らかな感触が広がった。「どう?おいしい?」麻美は期待に満ちた目でユニコーンを見つめた。ユニコーンは人参を噛みながら、その美しい目で麻美を見返す。


「気に入ったみたいだね!」零が笑顔で言うと、守田も安心したように頷いた。「これで仲良くなれるかもしれない。」


麻美はユニコーンの目が少し和らいだことに気づき、心が暖かくなった。「私たち、あなたを困らせたりしないから、お願い、このオアシスを共有してほしいの。」彼女の声には真摯な思いがこもっていた。


ユニコーンは再び彼女を見つめ、その後、静かに首を傾げる。何かを考えているのだろうか。麻美はその様子を見逃さず、さらに一歩踏み出した。「私たちも、あなたの友達になりたい。もし良かったら、力を貸してほしいの。」


一瞬の静寂の後、ユニコーンは少し後ろに下がり、その背中に広がる光が柔らかく輝き始めた。周囲の空気が変わり、三人の心が期待で高鳴る。まるでユニコーンの心が彼らの思いを受け入れようとしているかのようだった。


「お願い、私たちの思いを受け取ってくれ。」麻美は心の中で願い続けた。仲間たちも、彼女の思いを感じ取り、静かにその瞬間を見守った。


ユニコーンはついに、再び彼女の方へ向かい、優雅な動きで近づいてきた。その姿はまるで神秘的な存在そのもので、彼女の心の中で希望の光が灯る。麻美はユニコーンの動きに引き寄せられるように手を差し出し、再び彼との絆を築こうとする。


「あなたと友達になれたら嬉しいな。」麻美はそう言い、ユニコーンの前で静かに膝をついた。彼女の心の奥底から、純粋な思いが溢れ出していた。


その瞬間、ユニコーンが静かに彼女の手を嗅ぎ、心が通じ合ったかのように、柔らかくその頭を寄せてきた。麻美はその瞬間、心が温かく満たされる感覚を抱く。


「やった、麻美!」零が喜びの声を上げ、守田も笑顔を浮かべた。


ユニコーンとの絆が深まったことを実感しながら、三人は新たな冒険の始まりを迎える準備を整えた。彼らの心には、希望と友好の絆が宿り、新しいオアシスでの未来が待っているのを感じた。




静かな夕暮れ時、零と麻美は小道をゆっくり歩きながら、ふと立ち止まった。

周囲は淡く染まり、空気は柔らかく心地よい。

草の香りが漂う中、零は視線を空に向けて考え込んでいた。


「麻美、スギライトって知ってる?」零が話を切り出した。いつものアレだ。


「スギライト…?名前は聞いたことあるけど、詳しいことは知らないね」麻美は不思議そうな表情を浮かべた。

「スギライトは特別な石で、精神的な癒しをもたらすと信じられているんだ。」零は話を続けた。「昔、ある古代の文明で、この石は“心の守護石”として崇められていたんだ。」


「その文明では、スギライトを持つことで、心の混乱やストレスを和らげる力があるとされていた。特に、精神的な疲れを抱える人々にとって、この石は大切な存在だった。」零は自信を持って話した。


「ある日、村には一人の女性がいて、彼女は大きな悲しみを抱えていた。彼女の家族が不幸な事故に遭い、心に深い傷を負ったんだ。村人たちは彼女にスギライトを贈った。村ではこの石が特別な力を持っていると信じられていたから。」零は感情を込めて話す。


麻美はその女性の状況に共感し、「その女性はどうなったの?」と問いかけた。


「女性はスギライトを握りしめ、自分の心を癒すことを決意した。彼女はその石の力を信じて、自分の感情と向き合い、少しずつ前を向く勇気を取り戻していった。村人たちの支えと共に、彼女は新たな生活を築くことができたんだ。」零は物語を続けた。


「やがて、彼女は再び笑顔を取り戻し、村の人々と共に幸せな日々を過ごすようになった。スギライトは彼女にとって、心の強さを取り戻すための大切な象徴になったんだ。」零は最後の一言を力強く語った。


麻美は深く考え込み、「それも素敵な話ね。でも、心の傷は簡単に癒えるものじゃない…」と呟いた。


「そうだな。」零は静かに言った。


彼らは少しの間、静寂の中に身を置いていた。

周囲の景色が美しさを増していく中、二人の心にはスギライトの物語が静かに響いていた。暗くなる空を見上げながら、彼らは自分たちの道を考え、未来の不安を抱きしめていた。


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