■127
■三人は農家に到着した。小さな建物が畑のそばにあり、周囲には新鮮な野菜が育ち、太陽の光を浴びている。麻美が先頭に立ち、畑の向こうにある人参の群れを目指した。
彼女の心には、仲間たちと共に新たな冒険に向かう期待感が満ち溢れていた。
「ほら、あそこに人参が見える!」麻美が指さし、周囲の緑の中でオレンジ色の人参が顔を出しているのを見つけた。彼女はその光景を見て、自分の心が躍るのを感じた。「これでユニコーンに喜んでもらえるはず!」
「でも、どうやって取るかが問題だな。」守田が眉をひそめて言った。「この畑、どう見ても私有地だし、勝手に取るわけにはいかないよな。」
零は少し考えた後、周囲を見回しながら言った。「とりあえず、農家の人に聞いてみよう。お金を払って人参を買うことができるかもしれないし。」
三人は農家の建物に近づき、ドアをノックした。静かな音が響き、数瞬後に扉が開く。出てきたのは優しそうな中年の女性で、彼女の目が彼らを優しく見つめた。
「いらっしゃい。何かお探しですか?」彼女の声は穏やかで、どこか安心感を与えてくれる。
麻美は微笑みながら言った。「私たち、ユニコーンを説得するために人参が必要なんです。もしよろしければ、こちらで人参を買わせていただけませんか?」
女性は少し考え、そして笑顔で頷いた。「もちろん、いいですよ。ただ、こちらの人参は特別ですから、ぜひ大切に扱ってくださいね。」
その言葉に、三人の心が躍る「もちろんです!大切にします!」零が元気よく答え、守田と麻美も頷いた。
女性は、農場の奥から新鮮な人参を手に取り、丁寧に包装しながら言った。「ユニコーンの話、聞いたことがありますよ。気をつけてくださいね、彼らは意外と気性が激しいですから。」
麻美はその言葉にドキリとしたが、「はい、でも私たちは仲間ですから、どんな困難も乗り越えます!」と自信満々に答えた。
彼女は人参を手に取り、守田と零もその後ろに続いた。準備が整ったと感じた瞬間、彼らはユニコーンが待つ新しいオアシスに向かって歩き出した。
森を抜ける道すがら、三人はお互いの顔を見つめ、期待と少しの緊張感が入り交じっていた。「ユニコーンがどんな風に反応するか、楽しみだね。」零が言った
「大丈夫、私たちが心を込めて話せば、きっとわかってくれるよ。」麻美は心を奮い立たせ、希望の光を感じていた。
やがて新しいオアシスに到着し、そこには透き通る水の流れる池が広がっていた。青々とした草原の中で、白く美しいユニコーンが悠然と佇んでいた。
「おお、すごい…」零が息を呑む。「本当に綺麗だ…」
「まずは、ゆっくり近づいてみよう。」守田がアドバイスし、三人は静かにユニコーンに近づいていった。
ユニコーンは彼らの存在に気づくと、警戒するように頭を上げ、その美しい目が三人を見つめた。麻美は心の中で祈りを捧げながら、慎重に一歩ずつ近づいた。
「こんにちは、私たちはあなたにお願いがあって来ました。」麻美は声を優しく発し、彼女の手には持ってきた人参がしっかりと握られていた。
ユニコーンは少しずつ彼女の方に近づき、その視線が彼女の持つ人参に向けられた。「これ、おいしい人参なんです。あなたに贈ります。」麻美が手を差し出すと、ユニコーンはその香りに惹かれるように首をかしげた。
三人はその瞬間、ユニコーンの心が開かれることを願っていた。
果たして、彼らの思いは届くのだろうか。緊張感が漂う中で、心温まる瞬間が訪れようとしていた。