■118 あの女神サマの言葉は響かないよな
空が揺らぎ、心に響くような声が彼らの耳に届いた。それは、女神の声だった。
「待たせたわね、冒険者たち~!今は少しの間、私の言葉を聞いてほしいの。」
その声には、どこか軽薄さが感じられた。守田は目を細め、ため息をつく。「またか…」
「何だろうね、これ以上何を言うんだ?」零は不満を隠さずに言った。
女神は続けた。「戦いは見事だったわ。でも、これからの旅にはさらなる準備が必要なの。周囲にいる魔物を討伐していてほしいの。の~ん」
「魔物を討伐…」麻美はため息をつきながら、仲間たちの目を見つめた。「また面倒なことを頼まれるのか。」
「何か特別な理由があるんスか?」最近疲れ切っている零が、皮肉な口調で尋ねると、女神は微笑んで答えた。
「そうよ、あなたたちがこれから直面する試練に備えて、力をつける必要があるの。」
守田は、心の中で女神への軽蔑を感じつつも、冷静を装った。「じゃあ、また魔物を討伐して、力をつけろってことか。分かったよ。」彼の声には、心の中の苛立ちがにじんでいた。
「ええ、戦いを通じて仲間との絆を深めることができるわよ。」女神の声は、彼らを励ますかのようだったが、守田は内心で苛立ちを感じていた。
「それなら、任せてください!」麻美が元気に応じたが、その声には少しのためらいがあった。「どうせ、私たちがやらなきゃいけないんだから。」
「よい返事ね!」女神は満足そうに言ったが、その言葉には軽さが漂っていた。「さあ、準備ができたらすぐに出発してちょうだい。あなたたちの力を試す時間が来ているんだから。」
女神の声が消えると、三人の間には微妙な空気が流れた。守田は空を見上げ、ため息をついた。「また、やることが増えたな…」
「あの女神サマの言葉は響かないよな。」零は冷ややかに言った。「でも、仕方ない。やるしかないだろう。」
麻美も頷く。「そうね。今はやるべきことをやるしかない。どんな魔物が待っていようとも、私たちは立ち向かわなきゃ。」
三人は、それぞれの思いを胸に、新たな戦いへと向かう準備を整えた。彼らの心には、女神への軽い反発があったものの、仲間同士の絆を大切にし、試練に挑む意志が固まっていた。再び待ち受ける冒険の幕が、今まさに開こうとしていた。