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■103

特訓を終えた零、麻美、守田は満ち足りた心でレイラと別れ、ゆっくりと町の灯りが揺らめく道を歩き始めた。

宿屋へ向かう道中、心の中には冒険への燃えるような期待が再び蘇り、彼らの顔には新たな自信が宿っていた。


「いやあ、特訓って楽しいもんだな!」零が笑いながら言うと、麻美も微笑みを浮かべて応えた。「ほんとよね。レイラの教えはすごく分かりやすかったし、魔石との同調も少しずつ掴めた気がするわ。」


「俺も、魔法の幅が広がっている感じがする。次の冒険が待ち遠しいよ。」守田も頷き、次なる挑戦に思いを馳せていた。


宿屋に辿り着くと、温かい光が彼らを優しく迎え入れた。ドアを開けた瞬間、暖かさが全身を包み込み、まるで長い旅を労うような静かなぬくもりが広がっていた。灯りは柔らかく、部屋の中に広がる静寂が心を落ち着かせる。


「ここが今夜の宿だな。」零がほっとしたように言い、ふと振り返った。その時、麻美が何かに気づいたように、奥の厨房へと視線を向けた。「あ、宿屋の厨房を借りられるんだって。自炊ができるって聞いたわ!」


「自炊か、いいアイデアだな。」守田が賛同し、考え込む。「久しぶりに自分たちで料理を作るのも悪くないかもしれない。」


麻美の目が輝き、「じゃあ、私が料理を作りたい!」と意気揚々に宣言した。「スパイスも揃ってるし、カレーを作るのはどう?」


「カレーか、最高だな!」零が笑いながら答えた。彼の顔には、すでに料理の香りを想像しているような期待が満ちていた。「よし、じゃあ市場に買い出しに行こう!」


「行く行く!」麻美は嬉しそうに目を輝かせ、勢いよく立ち上がった。彼女の足取りは軽く、楽しさで心が満たされている様子がありありと伝わってきた。三人はすぐに宿を出て、夜の町へと向かい、市場へと足を運んだ。


市場に着くと、色とりどりの新鮮な野菜やスパイスが所狭しと並び、どこからともなく漂う香りが彼らを引き寄せた。麻美は目を輝かせながら、まるで宝探しをするかのように興奮した声で言った。「あれもいい、これもいい!」彼女は次々と食材を選び、カゴに放り込んでいった。


「ニンジン、ジャガイモ、そしてこのスパイスが…完璧!」彼女は香辛料の棚に目をやり、丁寧に一つ一つを吟味していく。その姿は、まるでアーティストが色彩を選ぶかのように真剣だった。


「麻美、何を選んでるんだ?」零が興味深そうに尋ねると、麻美は誇らしげにカゴの中身を見せながら、「これがあれば、絶対に美味しいカレーが作れるわ!」と自信満々に答えた。


買い出しを終えた麻美は、キラキラした瞳で素材を見つめ、料理への情熱が溢れんばかりだった。「よし、早速宿に戻って作ろう!」


宿に戻ると、麻美は厨房へと飛び込み、すぐに準備を始めた。彼女の手は軽やかに動き、スパイスや野菜を丁寧に切り分けるその姿は、まさに一流の料理人そのものだった。カレーのレシピが心の中に広がり、彼女は全身でその瞬間を楽しんでいた。


「いい香りがしてきたな。」守田が厨房に足を踏み入れ、香ばしいスパイスの香りに心を奪われた。「さすが麻美、料理の腕前が光ってるよ。」


「まだまだこれからよ。これからが本番だから、楽しみにしてて!」麻美は笑顔で返し、包丁をさらに軽やかに動かしながら、自分の料理に集中していった。


鍋の中で野菜が踊り、香辛料がその香りを一層引き立てていく。温かい蒸気が立ち上り、厨房は心地よい香りと温もりに包まれていた。その空間に広がる一体感は、まるで彼らの冒険の絆そのものを象徴しているかのようだった。


「出来上がったわ!」麻美が満足そうに言い、カレーを丁寧に盛り付けた。色鮮やかなカレーが輝き、その香りが彼らの食欲を一気に引き立てた。


「これはすごい…めちゃくちゃ美味しそうだ!」零が目を輝かせながら、待ちきれない様子で口元に笑みを浮かべた。


「久しぶりに自分たちで作った料理をこうして食べるのも、なかなかいいものだな。」守田も同意し、興奮した表情でカレーを見つめていた。


「さあ、いただきましょう!」麻美がカレーをテーブルに運び、三人はテーブルを囲んで食事を始めた。その場には、笑顔と温かさが満ち溢れ、彼らの間に流れる静かな絆が強く感じられた。


一口カレーを口に運ぶと、スパイスの深みと野菜の甘みが口いっぱいに広がり、体の芯から温まるような感覚が彼らを包んだ。その味は、ただの食事ではなく、仲間と過ごすかけがえのない時間を味わうものだった。


「うん、これ、本当に美味しい!」零が笑いながら言い、麻美はその言葉に頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。


「次の冒険に向けて、これで力が十分ついたわね。」麻美の言葉には、料理を通じて感じた絆が力強く込められていた。


このひとときは、ただの食事ではなかった。彼らの絆を深め、冒険の疲れを癒し、心をひとつにする時間となった。そして、これから迎える新たな冒険への力が、そのカレーの中に詰まっていた。

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