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鬨の声

 大聖堂の祭壇前に集合したセシリーナたち。集まった顔ぶれを前に女神が祈る。


「――どうか皆様に勝利が訪れますように。ご武運を」

「ありがとうございます、女神。行ってまいります」


 アベルが祭壇裏の隠し扉を押し開く。開かれた扉の先には夜の森の景色。『星を喰らう魔獣』の卵が隔離されている空間だ。


(……いよいよだ。いよいよ最終決戦が始まる――)


 セシリーナは密かに唾を呑み込む。緊張で心臓が高鳴っていく。扉を潜ると、頭上に星空の広がる夜空がセシリーナたちを出迎えた。靴が夜露に濡れる下草を踏みしめる。

 呆けたようにアンソニーが呟いた。


「ここが夜の森ですか。なんとも静かなところですね」

「最終決戦にふさわしい静謐さだな」

「緊張感ありすぎな舞台なんですけど」


 カルメンとデュークがそれぞれの感想を述べている。この静けさ、たしかに嵐の前触れのようだ。これから起こる大戦を予感させるかのように。

 フィオナが皆を元気づける。


「まあまあ皆さん、場に圧倒されていては勝てるものも勝てなくなりますよ。何事もなるようになりますって!」

「……おまえは呑気だな」


 すかさずラルフが突っ込んでいる。やはり二人は良いコンビだ。

 アベルが肩をすくめる。


「ま、そうだな。フィオナの言うとおりだ。ここまで来たら前に進むしかない」

「そうですね。慎重に行きましょう。ノーム、案内をお願い」

「合点承知ですじゃ」


 セシリーナがノームを召喚する。彼は女神の命で長年『星を喰らう魔獣』の卵を見張っていた。夜の森のことは熟知しているはずだ。卵に向けて歩きだしたノームの背中を追ってセシリーナたちも歩き始めた。




 夜の森の終わり――森の切れ目の先、開けた芝生の広場が現れた。場内は相変わらずしとしとと小雨が降り続ている。曇天と靄に隠されるようにして巨大な白い繭が浮き上がっていた。『星を喰らう魔獣』の卵だ。

 アンソニーが震え上がる。


「あ、あれがそうですか……!」

「なんとも気色悪いね」

「何と言っても怪物の卵ですからね」


 嫌そうに眉根を寄せるヒースに、ケルヴィンが冷静に返している。

 カルメンが目を見据えた。


「ふむ。幸いまだ孵化する様子はないな」

「孵化せんうちは殻のせいで攻撃が通じんのだったな」


 ダグラスが言って、アベルに視線を向ける。


「大将、今のうちに各自配置に付いちまおう。奴さんの幼体がお出ましになったときに一斉に総攻撃をかけられるようにな」

「そうだな。それじゃあ各員、少しだけ耳を貸してくれないか」

(アベル……?)


 アベルの呼びかけに、セシリーナを含む仲間たちは彼に注目する。これからの戦いを前に、彼は皆に伝えたいことがあるのだろう。皆なんとなくそれを察していた。全員がアベルの言葉を待つ中、彼が切れ長の目を細め、真剣な表情をする。


「ひとつだけ伝えさせてほしい。俺は、聖騎士として皆とこの場に来られて光栄だ。そしてこれから先も皆と幸せに生きていきたい」


 皆がアベルの言葉に聞き入っている。アベルが皆を見回す。


「だから勝とう。自分と皆のために。世界を救うだとかそんな大層なことは考えなくてもいい。自分のために戦い抜いて無事に帰って来よう」

「大将の言う通りだ。人一人が守れるものなんざ限られてる。自分と、ついでに隣にいる仲間を守ってやれりゃ充分だ」


 ニカッと歯を見せてダグラスが笑う。本当にその通りだと思った。自分一人で何もかもを背負わなくていい。何もかもを守ろうとしなくてもいい。皆がいてくれるのだから。支え合えばいいし、守り合えばいいのだ。一人の力は小さくとも、皆で力を合わせれば大きな力になると言うではないか。

 セシリーナは深く息を吸いこむと、手を前に振り下ろした。高らかに宣言する。


「それではこれより、ラストダンジョン攻略ツアーのメインイベントを開始します。――打倒『星を喰らう魔獣』!」

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