山道
翌日。旅行客たちは村の門前にある広場に集合していた。火山探索組と村観光組の二つのグループに分かれている。火山探索組には、ツアーガイドとしてセシリーナとアベルとケルヴィンが同行することになった。村観光組のツアーガイドとしてはヒースが残ることになっている。彼は村長と話をする時間が必要だったため、必然的にその割り当てになっていた。
セシリーナは仕込み杖を腰の革ベルトに固定する。戦闘準備は万端だ。
ヒースが火山探索組の前に立つ。
「皆さん、僕のほうに注目してください」
「ヒース?」
「大丈夫。防護魔法をかけるだけだから」
不安そうな表情をしたセシリーナに、ヒースが笑いかける。彼が軽く指を鳴らすと、セシリーナたちの身体が淡い銀色の光で縁どられた。その光は一瞬で消えてしまう。けれども身体が見えない膜で守られているように感じた。
自分の手足を不思議そうに見ている参加者たちに、ヒースが言う。
「皆さんに防護魔法をかけさせていただきました。これで火山の熱をある程度防げるはずです」
「おお、ありがたい」
参加者たちが歓声を上げる。おそらく火山内は歩いているだけで肌が焼けるように熱いのだろう。ヒースの防護魔法はそれを防いでくれるのだ。
準備を万全に整えたセシリーナたちは、村に残るヒースやユリアに見送られながら村の裏手にある火山を目指して出発した。
黒色や灰色の溶岩がごろごろと転がる山岳地帯。セシリーナたちは必死に登っていた。火山にたどり着くためには、まずは険しい山岳を登り切らなければならないらしい。
道案内を買って出てくれた村の若者は、もう慣れた様子ですいすいと急な山道を登ってゆく。その背中を必死に追いながら、セシリーナは額の汗を拭っていた。
(すごく険しい山道……。アベルもケルヴィンも全然平気そうだけれど)
先頭を颯爽と歩くアベルは息一つ乱れていないし、しんがりを務めるケルヴィンも汗一つかいていない。ついでに他の参加者たちを見回してみれば、やはりみんな傭兵や冒険者といった手練れ。自分ほどへばっている人はいなさそうだった。
私も負けていられない、とセシリーナは鼻息を荒くして勇ましく一歩を踏み出す。気合いを入れすぎたのか小石に足を引っかけて転びそうになってしまう。
「わあっ!?」
「セシィ!? 大丈夫か?」
すぐさま先頭のアベルが引き返して、よろけたセシリーナの手を取った。
ううう、不甲斐ない……。
セシリーナの手を握ったままアベルが苦笑する。
「ったく、おまえ鈍くさいんだから気をつけろよ?」
「うう、ごめんなさい……」
「どうしてもきついんならおぶってやるよ」
「お、おぶる……」
おぶる……アベルにおんぶしてもらうってこと?
「い、いやいやいや、それはさすがに恥ずかしいし、申しわけないです!」
「はあ? 気にすることないだろ。昔はよくおんぶしてやったじゃねぇか」
「む、昔と今は違います……!」
小さいころはさておき、今の年齢で殿方におんぶしてもらうなど恥ずかしすぎる。それも、憧れている彼だから尚更。
セシリーナは真っ赤になった顔を俯ける。それを不思議そうにしながらも、アベルは大切なものを見るような優しい目で見つめていた。
あけましておめでとうございます!




