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合流

「ふーん、僕たちとはぐれている間にウンディーネと会っていたわけね」


 ウンディーネと精霊契約を終えたセシリーナとアベルは、地上で捜索をしていたヒースたちと合流していた。セシリーナから地底湖に落下してからの顛末を聞くなり、ヒースが溜息を吐く。


「ウンディーネと無事に契約できたのは喜ばしいよ。けれど、それにしたって心配かけすぎ」

「こ、言葉もございません……」


 ヒースに頭を小突かれて、セシリーナは首を竦めた。自分とアベルが吊り橋から落下して、ヒースや仲間たちはずいぶんと洞窟内を探し回ってくれたらしい。あの巨大スライムは魔法剣士のケルヴィンを筆頭に仲間たちで退治してくれたとのことだった。皆手練れの戦士であるから、さほど苦戦することもなく負傷者も出なかったらしい。

 ほっと胸をなでおろすセシリーナ。ケルヴィンが苦笑する。


「お嬢様、ご無事でなによりでした」

「うん。心配をかけてごめんなさい」

「いえ。アベルが咄嗟に助けに向かったので、きっとお嬢様はご無事でいらっしゃるだろうと信じておりました。彼がついていれば大丈夫だろうと」


 信頼の視線を向けるケルヴィンに、アベルが笑顔を返している。

 本当にケルヴィンの言うとおりだ。あのときアベルが助けに来てくれなかったら今頃自分はどうなっていたことか。未熟な自分が情けないばかりだった。自分の身くらい自分で守れるようにならなければ。

 そうセシリーナが深く反省したときだった。唐突に空中に水の渦が現れる。それはあれよあれよという間に水の精霊ウンディーネの形を取った。


「ご主人様、そんなに落ち込まないでちょうだい。貴方が吊り橋から落ちたのは全部わたくしが仕組んだことだったのだから」

「ウンディーネか。仕組んだってどういうこと?」


 ヒースがウンディーネをちらと見やってから片眉を跳ね上げる。ウンディーネが首をすぼめた。


「じつはセシリーナとお会いしたいがばかりにわざと吊り橋を落としたのです。他に方法が思いつかなくて……」

「いや、そんな危ない方法を試さなくてもさりげなく地底湖に導くとか他にやり方あるでしょ!?」

「ご、ごめんなさいぃ」


 ヒースに叱られてウンディーネが小さくなっている。

 さすがヒース。精霊の扱いも手慣れたものだ。

 セシリーナはヒースとウンディーネの間に割って入る。


「まあまあ。ヒース、それくらいにしてあげてください。こうして私も無事だったことだし」

「結果的には上手くいったのかもしれないけれど。僕がどれだけあんたを心配したと思って……」

「え?」

「なんでもない」


 聞き返すと、ヒースがぶっきらぼうに言ってそっぽを向いてしまった。

 よくわからないけれど、きっと彼に心配をかけてしまったのだろう。彼は見た目や態度は無愛想だけれどその実とても優しい性格だから。

 アベルが場の空気を換えるように咳払いをする。


「ともかくこのあたりが洞窟の最深部だよな。ダンジョン攻略達成ってことでいいんじゃないか?」

「そうですね。皆様お疲れでしょうから、そろそろ王都に帰還いたしましょう」

「巨大スライムと遭遇するわ、セシリーナは吊り橋から落ちるわ、ウンディーネとの契約は成功するわ――イベント盛りだくさんのツアーだったね」


 話を切り上げるケルヴィンの隣でヒースがぼやいている。

 本当に、彼の言うとおり目まぐるしいツアー内容だった……。ウンディーネとの契約という目標を達成できて私的には大満足だ。吊り橋から落下するという貴重な経験も積めたし。

 洞窟の帰り道、ケルヴィンが思いだしたように言う。


「それにしてもあの巨大スライム、手強かったですね」

「本当にね。竜王の復活が原因で魔獣の生態系に乱れが生じていて、狂暴化しているのだったら、これからもああいった強敵と遭遇するかもしれないね」

「早いところ竜王をなんとかしねぇとな」


 ヒースの言葉に、アベルが神妙に頷いている。

 竜王復活の余波の影響で、各地の魔獣たちの力が増している。シュミット村や王都が狂暴化した魔獣に襲撃されたのは記憶に新しい。やはり早急に各町や村に警備兵を増やす必要があるだろう。また、対策するうえでどの範囲にどのような魔獣が出没するのかといった状況の把握が急務になりそうだ。だからこそ、ダンジョン攻略ツアー事業は理に適っている。国策にふさわしいと言えるだろう。

 洞窟の帰り道がてら、アベルが言う。


「これからはダンジョン攻略ツアーも積極的に取り入れていったほうがいいかもな」

「うん、私もそう思ってた。ツアーの参加者は腕の立つ人ばかりだから、後々警備隊を組むときに声をかけやすくなりますもんね」

「ああ。今後はそういった観点も見据えていかないとな、社長」


 頑張れ、とでも言うようにアベルがセシリーナの頭にぽんと手を置いた。

 人脈の構築という観点でもダンジョン攻略ツアーは有意義なものになる。自分は観光旅行業を営むにあたって、多くの目的を視野に入れなければならない。責任は重大だ。気負いすぎず、それでいて気を抜いてはいけないのだ。

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