第二話『別れ』
「───これ、どういうこと?」
紗代に写真を見せる。
写っているのは、僕の友人である和哉と並んで街中を歩いている御代。
画面を横にスライドすれば、別の日にも同じような写真が何枚も映し出される。
「一日だけならクラスメイトだからって見過ごしてたけど、さ」
「……はぁ、あんた、どれだけ私のこと盗撮してんのよ。いつの間にかストーカーになっていたのね。……これだけの写真、たまたまなんて言わないわよね?」
その通りだ。
偶然なんかじゃない────必然だ。
御代と和哉がいつ、どこに出掛けるか、今どこで何をしてるか……その全ての情報が僕に共有されている。
「ストーカーと思われようが、罵られようが、今はそんなのどうでもいいんだ……これがどういうことか教えてくれればそれで」
「どういうことって、これだけ盗撮してたらさすがに分かるでしょ?馬鹿じゃないんだから。彼氏よ、彼氏。私の新しい彼氏」
悪びれる気なんてない様子の御代から、狂気じみたものを感じる。
「新しい彼氏……なら僕は────」
「用済みよ」
変わらない態度で、淡々とそう告げてきた。
「……なんで、とか聞いてみてもいいか?」
「大した理由じゃないわ。単に、衛戸と一緒にいても楽しくなくなったの」
「……それだけ?」
「言ったじゃない、大した理由はないって────ってあぁ、もうこんな時間か」
御代が壁に掛けられている時計を見て、時間が迫っていることに気付いた。
和哉との約束の時間だ。
「私もう行くから。あ、一応確認してくけど、別れるってことで良いんだよね?」
「当たり前だろ」
「そっか、じゃあもう連絡してこないでね。じゃあね」
早足気味にファミレスを後にする紗代を確認してから、肩の力を抜く。
意外とあっさりと終わったな。
終わったのだが……気の所為だろうか、少しだけ……いや、無いな。無い。絶対に無い。
気の所為だ……絶対────御代が寂しそうな表情、するわけがない。