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7 飛翔


「そしてだ! 今回はなんと報酬も出るぞ!」

「報酬?」


 冒険者の救出は基本、無報酬だ。

 自分が助けられる側になった時、金のありなしで見捨てられるような事態を避けるための暗黙の了解だったはずだけど。


「報酬はなんとルリちゃんとデート一回だ! 先着一名様、早い者勝ち! ライトを見付けてここに連れてきた奴のものだ!」


 先ほどよりも大きな歓声が辺りに響く。

 デート一回だって?


「ってことで良いんだよな、ルリちゃん」

「うん。ライトを助けてくれるならなんでもするから! ライトを助けて!」

「だそうだ! みんな聞いたな!」


 これはかなり不味い事態になっているみたいだ。

 ルリの奴、気持ちは嬉しいがあんなことを言ったら野郎共の歯止めが利かなくなる。

 冗談じゃない、ゆゆしき事態だ。

 とりあえず俺を陥れた二人組のことは後回しにして今はこの状況をなんとかしないと。

 報復はまた後日、きっちりと実行させてもらうことにする。

 顔も覚えたことだしな。


「よーし、じゃあ開始の合図だ。ダボネ! ドンッ、の用意をしろう」

「よ、よし来た。俺に任せてくれ」


 様子を窺うとこの場を仕切っている小太りな男の隣りに痩せた男が立つ。


「いいか、俺がよーいって言ったらドンッ、だぞ。いいな」

「わ、わかってる。俺に任せてくれ、ラッソン」

「じゃあ、いくぞ。よーい――」

「ちょっと待った」


 この事態を打開するにはもう俺自身が姿を現すしかない。

 物陰に隠していた身をさらけ出して、冒険者たちの前に出る。


「な、なんだ? ありゃ。ゴーレムか?」

「ゴーレムまで参加すんのか?」

「はっ! ナ二はついてんのかよ」


 あぁ、この格好じゃわからないか。


「ヘルメット取ってくれ」

『了解』


 ゴーレムスーツの頭部が段階的に格納され、俺自身の素顔が衆目に晒される。


「ライト!? どうしてここに!? なんでもいいや! ライトが戻って来た!」

「よし、そうだ。俺を捕まえに来い」


 人混みを掻き分けてこちらに駆けてくるルリを両手を広げて迎え入れる。

 胸に小さな衝撃があって首の後ろに手が回る。

 よし、しっかりと俺を捕まえたな。


「もうドンッって言って良いぞ」

「ドンッ!」

「よーし、これで一番に俺を救出したのはルリってことになったな」

「私? 私が私とデートするの?」

「そうだ。ってことでみんなご苦労様。俺のために集まってくれたみたいで、どーも。心から感謝してる。みんなが困った時は俺が助けにいくよ、ありがとう。それじゃ」

「おいおいそりゃないだろ」


 このまま何事もなく帰れていたら楽だったんだけど、そうもいかないか。

 立ち塞がったのは小太りの男、たしかラッソンだっけか。


「みんなお前さんの身を案じて朝っぱらからこうして集まったんだ」

「あぁ、知ってる」


 本当はルリが目当てだってことも。


「それなのにナ二もなしってか? それじゃあ誰も納得できねぇぜ」

「そうか、なるほど。たしかにな。でも、ルールはルールだ。そうだろ? なぁ、さっきドンッって言ったよな?」

「あ、あぁ! 確かに言った! 俺は言ったよ!」

「ほらな。そっちが決めたルールに則って、いまこういう結果になったんだ。納得できなくてもルールには従ってもらわないと」

「ごちゃごちゃうるせぇな。妙ちくりんな格好しやがって」


 引き抜かれた剣の鋒がこちらに向けられる。

 周りの冒険者もそれに続くように得物を抜いた。


「あーらら。ルリがなんでもするなんて言うから」

「だってライトを助けたかったんだもん!」

「それについては感謝してるよ。とっても」


 俺が今このタイミングで戻ってなかったらどうなってたことか。

 あとでルリにはちゃんと言い聞かせておかないと。


「こうなったら早い者勝ちはなしだ。順番になんでもしてもらおうじゃねぇか。お前が大人しく深層で待ってりゃ相手は一人で済んだってのによ」

「お生憎様。例えそうだったとしても俺が許すかよ。ヘルメット付けてくれ」

「あ?」

『了解』


 格納されていたヘルメットが顔を覆う。


「ルリ。しっかり捕まってろ」

「う、うん!」


 ルリの膝に手を回して抱え上げ、飛行ユニットを再点火。


「なんだ!? なにしてやがる!」


 砲塔から噴き出す魔力による風圧が周囲の冒険者たちを遠ざける。


「飛べ!」


 地面を蹴って跳ぶと同時に、この身は天高く舞い上がった。


「なッ!? 嘘だろ、なんだッ! 今のは!」

「どうなってやがる! 火を噴いて空を飛んだぞ!」

「すぐに追い掛け――られもしねぇ。もうあんな遠くに」


 数多の冒険者から無事に逃げ果せ、雲の直ぐ下で滞空する。。

 眼下では俺たちが住む街並みが広がり、絶景を一望できた。


「大丈夫か? ルリ」

「うん、平気だよ。助けてくれてありがとう! 私が助けるはずだったんだけど」

「まぁ、全部上手くいったんだ。それでよしとしようぜ。あ、でも軽はずみな言動は慎むこと! いいな」

「うん、そうする。ライトの言うことちゃんと聞く」

「なら、よし。一時はどうなるかと思ったんだぞ、マジで」

「ごめーん」


 まぁなにはともあれ、こうして無事ならもう文句はない。


「それじゃあそろそろ地上に降りるか。このゴーレムのことも聞きたいだろ?」

「うん! 聞きたい聞きたい! なにそのゴーレム! どこにあったの! なんで飛べるの!」

「質問は地上に降りてから!」

「やだやだ! そんなに待てない!」

「口閉じてないと舌噛むぞ」

「んんんんんんんんん!」

「黙っててもうるさいと来た」


 ため息を付きつつも速度を付けて地上まで加速落下。

 その日、一筋の流星が朝に流れたというニュースが話題なったらしい。

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