5 作成開始
「じゃあ、なんで提案したんだよ!」
『破損した情報領域から設計図のサルベージに成功しました。当機のファブリケーター機能を用いればこの場での作成も可能です。材料さえあれば』
「マジでなんでもできるんだな……わかった、その材料は?」
『指定対象をフォーカス。表示します』
再び光の輪郭が障害物を透過して視界に表示される。
「これ、ほとんど壁とか地面の中だな。まぁ、鉄を掘るなら当然か」
『当機の構成材質は鉄ではありません』
「わかってる、そういう意味じゃない」
あと何回かはこういうやり取りを繰り返しそうだな。
「さて、じゃあ掘るか。魔物を掘り当てないようにしないと」
握り拳で壁を砕き、揃えた指先で地面を掘る。
ゴーレムスーツの怪力があれば作業はごく短時間で済んだ。
赤、黄色、紫、青、様々な色の鉱石を発掘し、まだ足腰がしっかりしている机を幾つか繋いだ上に集めた。
「綺麗なもんだな。石に興味はなかったけど、なんか幻想的だ」
この内に光を秘めているような紫の鉱石なんかは特に目を引く。
きっと外に出て日の光に翳せばもっと綺麗に見えるんだろうけど、今はそうもいかない。
今はまだ遠い空に翳す振りをしてため息を付く。
『その鉱石は刺激を与えると爆ぜるので注意してください』
「先に言え!」
努めてそっと机の上に戻す。
恐ろしい鉱石だった。もう二度と触らない。
「ほら、とっとと始めてくれ」
『了解。ファブリケーター機能によって飛行ユニットの作成を開始』
ゴーレムスーツから音がしたかと思うと、張り付いていた武装の一部が宙を舞う。
それらは机上の鉱石類をまるで毛糸を解くように吸収し、その代わりとばかりに光線を吐く。
綺麗に物がなくなった机上に光線が走り、その後には飛行ユニットの土台となる部分が構築されていた。
「筆を走らせてるみたいだ」
『積層造形法によって薄い層を幾重にも重ねることで立体を作り出しています』
「完成までどれくらいだ?」
『完成予定は十分二十三秒後です』
「それまでは暇だな、よっと」
地べたに腰を下ろして仰向けに寝転ぶ。
ゴーレムスーツのお陰で走り回れるけれど、中身のダメージが消えた訳じゃない。
全身に走る鈍い痛みにはもう慣れたけど。
完成まであと十分。その間にすこしでも体を休めたい。
「十分経ったら起こしてくれ」
『申し訳ありませんが、休息の時間は取れそうにありません』
遠くで響く魔物の雄叫び。
それが俺の耳にも届き、跳ね起きた。
「臆病者が戻って来やがった」
俺をここまで落とした巨躯の魔物――を模したゴーレム。
その咆哮に怯えて逃げていた魔物たちが再びこの場に集おうしている。
当の本人がいなくなったのを良いことに、これ幸いとだ。
「完成まであとどれくらいだ?」
『残り九分三秒です。飛行ユニットの作成作業に支障を来す恐れがあります。敵性生物から守ってください』
「まったく、人気者は辛いな」
『人の肉に飢えてはいるでしょう』
「食材としてじゃなくてだな」
なんて言っている間に、魔物の第一陣が現れる。
どれもこのダンジョン特有の姿をしていて名称はわからない。
わかるのはそれらに似た動物くらい。
猿、狼、鷲、蛇、小鬼、その他もろもろ
ただいずれも近縁種との交戦経験くらいはある。
そこにゴーレムスーツの怪力が合わされば残り時間、飛行ユニットを守り切るくらいのことはできるはず。
「やってやる。掛かってこい!」
魔物の群れに向かって跳躍し、瞬く間に殴り込む。
振るった拳が胴を捉えて、絶命した魔物は弾丸となって後続を吹き飛ばす。
同時に上半身を捻って左側面から迫る魔物にアッパーカット。
天井に亀裂が走ると共に、逆方向から襲い来る魔物を裏拳で砕く。
腕を、足を、振るうたびに血飛沫が舞い、肉片が散る。
血みどろになったゴーレムスーツは、これも何かしらの機能なのか、瞬く間に赤が消えて行く。
視界を覆うように散った血糊も、次の瞬間には消え失せていた。
『敵性生物が飛行ユニットに接近』
「えぇい、忙しい!」
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