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11 調査資料


「なるほど……ダンジョンの深層でねぇ」


 意識のない犯人たちはそっち退けでカインはゴーレムスーツの周りをぐるぐると回る。


「中に入って操縦するんだろ? どんな感じなんだ?」

「そうだな……操縦してるってよりも合わせて動いてもらってるって感じだな。歩いても走っても全然邪魔にならないんだ。それでいて力は何倍にもなる」

「そりゃ凄い。この鉄の鍔は? 飛べるのか?」

「あぁ、雲の上まで一っ飛びだよ」

「そうか……最高の気分だろうな――なぁ、これって俺も着られるのか?」

「どうだろ? 俺の体格にぴったり合うように調整されてるからな。どうなんだ?」

『パイロット以外の搭乗は認められません』

「なんだよ、じゃあダメか。ちょっとがっかりだな」

「なんなら俺が着て空に連れて行ってやろうか? まぁ、ああなるかもだけど」


 ちらりと意識のない二人組に目をやる。


「酷い有様だ、いったいどんな拷問を?」

「ずーっと高く飛んで、そこから落とした」

「落とした? そりゃ気の毒に。にしても臭うな」


 カインは顔を顰めて二人から目を逸らした。


「こんな状態だけど、引き取ってくれるか?」

「あぁ、格好はどうあれ殺人未遂犯二人だ、良い手柄になる。目が覚めたら自分で牢屋に入ってもらうよ」

「素直に従うかね」

「ここをどこだと思ってるんだ? 天下の治安維持局だぞ。それに着替えを用意すると言えば喜んで檻の中にはいるだろうしな」

「たしかに、違いないな」


 この二人も下半身が寒かろう。


「う、ううん」

「おっと、お目覚めだ。ちょうどいい、ライトも一緒に来てくれ。調書を取らないと」

「わかった。お前はそこで待機な」

『了解。帰りをお待ちしています』


 目を覚ました二人組は歩かされ、然るべき所に一時収容された。

 これから本格的な牢屋に向かうことになる。

 カインと言った通り、着替えを用意してやると言ったら自分から入って言った。

 その後、俺たちは隣りの部屋で調書を取ることになった。


「魔物の姿を模倣した精巧なゴーレム……」

「あぁ、最初はダンジョンが暗いこともあって本物の魔物だと思ってた。でも、斃してみたらあら不思議、中身はゴーレムだったってわけ」

「……ちょっと待ってろ」

「あぁ」


 やけに深刻そうな顔をしたカインを見送ってしばらく、戻って来た。


「こいつを見てくれ」

「なんだよ、それ」

「事件の捜査資料」

「それって俺が見ていい奴か?」

「ダメだ」

「おいおいおい」

「ダメだが、気になることがある。こいつだ」

「えーっと、討伐した魔物がゴーレムだった……ってこれ」

「あぁ、そうだ。ここ最近になって似たような事件が起こってる。そして奇妙なことに」


 調査資料が捲られる。


「報告者のほとんどがその後、ダンジョンで命を落としてる」

「……つまり」


 カインが規則を破ってまで調査資料を見せたのはそういうことか。

 俺の殺害を企んだ二人組は牢屋に送られる。

 それで全てが終わると思っていたけれど、どうやら違ったらしい。


「ダンジョンで冒険者が死ぬことはよくある。実際、偶然の連続ってことでこれに関しては事件にはなってない。だが、ダンジョンでの死が事件にならないのを良いことに好き勝手してる何者かがいる。気を付けろ、ライト」

「……あぁ、肝に銘じておく」


 調書を書き終えてカインとは別れ、屋上へと向かう。


『お帰りなさいませ』

「ああ」


 解けたゴーレムの中に入り、この身が再び包まれる。

 飛行ユニットに熱が灯り、魔力の放出と共に大空に舞う。

 とにかく考えごとがしたい気分だ、とりあえず目に入った時計塔に下りるか。


「さて、どうしたもんか」


 時計塔に降り立ち、絶景を眺めながら腕を組む。


『ダンジョンでの死亡が相次いでいるのであれば近寄るべきではないかと』

「聞いてたのか? 俺とカインの会話」

『当機は常に周囲の状況を観察しています。その範囲内にパイロットがいたので』

「なるほど。で、さっきの提案か」

『危険に自ら飛び込む必要はありません』


 たしかに事件はダンジョンで起こっている、近寄らなければいい。

 蓄えならあるし、一ヶ月くらいならそれほど貯金を削らなくて済む。

 考え得る限り最善の手だ、その間に治安維持局が重い腰を上げて事件として取り扱う可能性もある。

 裏で糸を引いていた何者かが捕まることだってあるかも知れない。


「……はぁ……ダメだダメだ。やっぱ、性に合わないな」


 逃げ続けるのは俺の性分じゃない。

 襲ってくるなら返り討ちが俺の信条だ。


「俺の命が欲しいってんなら上等だ。最後までとことんやってやる」

『それはパイロットではなく、治安維持局局員の役目です』

「だとしても、俺がなにもしない理由にはならない。俺がそうしたいって思ったからやるんだ、理屈じゃないんだよ、こういうのは」


 それに放っておいたらいつかルリまで標的になるかも知れない。

 そうなる前に黒幕をぶっ潰す、決まりだ。


『了解しました。パイロットの意向に従います』

「よし、じゃあ帰るか」


 街の上空を一筋の雲が過ぎていく。

 早速明日から捜索開始だ。

 まず手始めに俺を襲ったあの魔物を模したゴーレムを調べに行ってみるか。


「深層に行くの!? あたしも行く! 行くったら行く!」


 ルリも付いてくることになったけど、まぁ大丈夫か。

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