かわいそうと言われましても
「魔法使いではないと言われることがどういうことだかわかっているのか!!」
オリヴァーが私を怒鳴る。
私は魔法使いではないし、魔法使いの家系ではないので伝統的な貴族との付き合いが厳しくなること以上の事は分からない。
「俺はいい。けどな、姉上がどんな目で見られるのかお前は考えたことがあるのか!」
言われた意味が分からなかった。
そもそも、なにか一つでも自分に関係あることであれば考えるかもしれないけれど、私に何か関係のある事柄だっただろうか。
家門に傷がつくことを夫人としてどう思うという意味だったのだろうか。
「すみません。言ってる意味が――」
ぱしん、という乾いた音がした。
この兄弟はすぐに頬を張るのが癖なのだろうか。
「魔法の力が無いとされた女の子を欲しがる貴族などいないんだぞ!!」
オリヴァーが怒鳴った。
それで一つだけ腑に落ちたことがある。
閨を私たちは共にしたことが無い。
そういう事か。そういう事なのか。
彼の貴族としての義務と私にとっての貴族としての義務の意味が違っている。
思わず乾いた笑い声が漏れた。
「何が可笑しい!!」
オリヴァーが怒鳴る。
魔法使いではないと言われてると義姉が困る。その子供たちも魔法使い扱いされないから困る。
「人間扱いされない事の辛さがお前にわかるのか!」
ああ、この人はそういう風に見ていたのか。
私や私の実家をそういう風に見て、そういうところだと思って援助を受けて、形だけの婚姻をした。
今までの行動すべてにようやく納得がいった。
『そんな馬鹿の言葉、聞かなくていいよ』
ここにはいない筈の人の声がして、耳が温かなものでふさがれた。
「どうして――」
私は思わずつぶやいた。
魔導士様、セオがこんな場所にいるはずが無いのに。