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涙、そして

泣いて、泣いて、嗚咽が思わず漏れた時、魔導士様の手が私の背にそっと触れた。

それからすぐに、「申し訳ありません」と手を引っ込められる。


「魔導士様……」

「もう、セオとは呼んで下さらないのですね、お嬢様」


当たり前だ。

崇高なる魔法使いの名を気軽に呼べるはずが無い。

少なくとも教会にいる魔法使いの事は魔導士様と呼ぶ慣習だ。


それに私はもう『お嬢様』ではない。

結婚をしているし、何より彼は我が家に勤めているわけでは無い。


「何故、わたくしの状況を知っていたのですか?」


噂になってしまっているのだろうか。

私の知らないところで。


「そういう特別な魔法があるだけです」


聞いたことが無いからきっと希少価値の高い魔法を使ったという事だろうか。

プライバシーを勝手に明かされた怒りは不思議と無かった。


彼が私の実家に仕えていた頃プライバシーなんてものは無かったからかもしれない。


子供の様にひとしきり泣いて、恥ずかしくなってしまうと魔導士様は「お嬢様は子供の頃から何もお変わりありませんよ」と言って笑顔を浮かべた。



「この件、少しばかり私にお任せ願えませんか?」


魔導士様が言った。

教会はとても顔が広い。義姉の結婚相手を探してくれるのだろうかと思って頷いた。


* * *


それから一週間後、実家から「方針が決まったのでしばらくはくれぐれも静観するように」という旨の連絡が入った。

くれぐれもと念を押す理由が私には分からなかったけれど何かするつもりなのかもしれない。


どちらにせよ、私は政治の駒でしかないのだろう。

溜息をつくと、実家からの使いに了承した旨を書いたメッセージカードを持たせた。

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