第3話
第3話
不安と思っていた彼女との取引。
結果的にはwinwinの内容で身構える必要は全然なかった。
本格的に異世界デビューするまでは。
「……じゃあ女神さまと契約すれば全チート能力が使えるうえ、異世界で大活躍できるんですね?」
「そう。この世界じゃ最強の美少女じゃないかしら」
簡単に説明すると、ボクの身体を『依り代』として使用するかわりに、彼女の全チート能力を使わせてもらえるとのこと。
「ぶっちゃけ私のチート能力を行使して乱れた世界の修復代行をやって欲しいのよ」
これは人々から感謝される予感。まさに願ったり叶ったりの好条件じゃないか。
「わかりました。よろしくお願いします、女神さま」
「一緒に旅するんだもの、メアリスでいいわ。よろしくね」
メアリス? メアリー…… ある意味、見た目通りのお名前なんですね。
「アンタはナオでいいわよね?」
「はい。 え? 女神さ……メアリス様も同行するんですか?」
「そうよ? あのイキリ小僧共に直接おみまいできるチャンスですもの」
悪い笑顔でフンスと鼻息も荒くこぶしを握るメアリス。
「能力を行使する時だけボクの身体に降りるんだと思ってました」
「マケビト共は目を離すと私の仕事が増えるって経験してるからね」
過去にニゲートをくぐった先人達と何があったんだ……
「それにさっき言ったでしょ? ヤツラに直接おみまいするって」
逃げて、マケビトたち!
「それには女神の正体を隠して、アンタと美少女ふたり旅ってのが手っ取り早いのよ」
「一応確認したいのですが、まさか殺したりはしないですよね? 僕が『おみまい』されたみたいに」
「大丈夫よ。アンタ殺った時に怒りゲージはかなり減ったから」
やるつもりだったよ、この人! おっかねぇ。 まぁ考えようによってはボクの犠牲で大量殺戮の旅ではなくなって良かった。
「まずはセオリー通り、アンタお待ちかねの冒険者登録に行くわよ!」
あこがれの冒険者! これはテンションがあがる。
メアリスがパチンと指を鳴らすと、この味気ない真っ白な空間が渦を巻き、入れ替わりに緑が広がる小高い岡へと転移していた。
「ほんとに異世界だ……」
肺を満たす清々しい空気が頬を撫でていく。
眼下に広がるなだらかに隆起した草原の先に見える城郭都市。
振り返れば遠くには切り立った崖や深い森。
ぐるりと見回したこの世界は、まさにファンタジーゲームでお馴染みといった感じ。
でも期待の方が大きく、新鮮味が無いとは全然思えなかった。
「ここが私の世界『アルカノアイランディア』よ」
「コトブキヤ的な?」
「ア・ル・カ・ノ・アイランディア! 拾いづらいボケしたら殺すわよ? アンタの……ナオの世界で言う『ナーロッパ地方』と共通項は多いと思うわ。特にご都合主義的恩恵とかね」
今まさに感じました。ボケを拾えるメアリスの知識量で。
「ボクの世界では『ニートの厄介払い』&『本人がニート生活と決別する』ふたつの意味で『ニート捨て山』って呼ばれてました」
「なんか微妙なダブルミーニングね」
まぁ地名は置いといて、アニメやラノベで慣れ親しんだ世界観になっているって事なのかな。
「マケビト用のローカライズ、ありがとうございます」
「甘やかした結果、恩をあだで返されちゃったけどねっ!」
そして幕が開ける尻拭いの旅。