2・なんかこう、酷くね?
「やっぱり、奏斗はいつも凄いなー!!」
周りの様子を見て、自分のことのように喜んで誇らしそうに笑う陽。なんだかとっても満足そうね…
「はぁ…まったく。たまに同じ人間なのかどうかを考えてしまうぐらいだわ…。」
私も、いつも通り変わっている周りの人と幼馴染み達に対して、溜め息を吐きながら呆れた。
すると、
「……いえ、別にそこまで凄くはないかと。それに僕も、同じく人間ですから……。」
なんて、周りのことなど至極どうでもよさそうに言う奏斗。
(えー…いやいや、凄いわよねぇ…!?)
全ての事に全くもって、興味を示さない。…奏斗は本当に私達と“同じ”、人間なのかしら?
なんだか片足…いえ、両肩と片足ぐらいは神の領域に突っ込んでそうよ…。
ーーそもそも、私たちが知り合ったのも単に家が近所で、偶然年も同じだった、ただそれだけだったのよ。
…だから、もしかしたら一生関わることもないような、そんな雲の上の、そのまた上の上をいくような存在だったかもしれないのよね。
「羨ましいぜ?まったく周りの反応がこうも違うとかさー!」
周りの人が言うように、神だったとしても奏斗だったら納得できちゃうのよ
『奏斗だもんね、奏斗ならあり得るね!』って思えちゃうような、何か…パワー的な?ものがあると思うのよね。
「なー美乃梨もそう思うだろー?」
それでもまぁ、私としては陽の方が凄いと思っているのだけどね?
だって陽には陽の、素敵な要素があってね、それがまた最高なのよ、最強なのよ!(奏斗には無い要素なのよね!)
この学園唯一の心のオアシス、みんなのオカンと言っても過言じゃない程に、優しくて暖かくて心安らぐ癒し要素がね、あるのよ!
例えば、疲れている人を見れば元気になれる料理を作って差し入れたりし、
落ち込んでいる人がいれば、その人に合わせて傍にいるだけとか、励ますとか話をひたすら聞くとか、気分転換にどこか一緒に遊びに行ったりし、
困っている人がいれば真っ先に助けに行き、状況に応じて適切な対応をとり、事が済んだ後のケアもしっかりし、
何よりそれを鼻にかけたりしない、こんなの当たり前だと言って、いつも謙虚であるってのもまた凄いのよ!
あぁ、もっとそういう所を誇れば良いのにーーー。
「……い、おーーーいっ!美乃梨ってばー!!ちゃんと聞いてたか?」
「!?なっ、何かしら陽?」
軽く別の所へ意識が飛んでいた私に、陽は近い距離で言ってきた。話を一切聞いていなかった私は、
(…どうしよう、どうしよう…どんな話をしていたのか思いっ切り忘れちゃったわ……と、そんなことより近い!近いわよ陽!!ど、どうしよう!!)
と内心パニック状態になっちゃって、でも必死に、何とか会話を思い出そうとしたわ。全然思い出せそうに無いけどね!
そんな私に対して、2人は溜め息を吐きながらも心配そうな顔をする。
「なぁ、今日…美乃梨大丈夫なのかよ…?」
「…美乃梨さん…本当に、大丈夫ですか…?」
(うっ…2人とも、優しいわ…。)
何だかんだ2人とも優しいのよね、結局…。
だから私と違って、二人は人気者だし…。
「二人とも…ありがとう心配してくれて!」
(私も二人を見習わなくっちゃね。)
私は大丈夫よ!そう言おうと口を開いた、が。
「いえ、違うのです…。」
「違うんだなぁーそれが。」
奏斗は相変わらず無表情のまま、陽は首を横に振ってから言った。
……何かしら?
「ほらアレだよ、頭的なやつだよ、本人には自覚症状がないってのもあるからさ!」
…いやシンプルに失礼ね!?優しさとはァって感じよ!?
「…もしくは、美乃梨さんがまた可笑しな物でも拾って…食べてしまったのかと…。」
「失礼じゃない!?色々と失礼じゃないかしら!?というか『また』って何よ!?」
(…いや確かに昔一度だけあったけど!!そんな事もありましたけど!!)
だからって、今、今ここで言うかしら!?ちょーーーーーっとだけ意識飛ばしてただけで言っちゃう系のことかしらァ!!
やめてよねぇ!?一応これでも私、クールなお嬢様で通してるんだからぁ!!
何よもう!2人の鬼畜ゥ、一毫の優しさもない、なんかこう、悪いヤツらめェ!!
流石の私も、キレちゃうんだからねッ!
「…2人とも、歯ァ食いしばりなさい?」
昔の私なら、予告することなくボディブローかましてたけども、今の私は大人になったからね?予告くらいはね?
大丈夫、流石に林檎を握り潰す時の力ではやらないから!
「ストーーーーーップ!ストップ美乃梨、ステイだ美乃梨!!悪かった、俺が悪かったから、教室では止めような!?ほら、素の状態に戻ってるから、戻るんだぁ!!」
「ーーはっ、そうだったわね…私としたことがっ!」
くっ…ついうっかり…