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第88話 決起部隊 対 実験中隊 ── 襲撃班の戦闘 ──

 梶山達の襲撃班は海側から接近した為に、一番近い敵から百数十メートル離れた地点まで発見されることなく接近を果たしていた。

 彼がそこを射点に選んだのは、背後が海岸で開けており、噴進砲の後方爆風に曝されないで済むからだった。


 噴進砲は一般火砲とは違い、砲弾自身の噴射で飛翔していく。

 だから反動は少ない反面、後方に大量の燃焼ガスを噴出するために、背後に遮蔽物がそびえてたり囲まれた室内で発射すると、その火炎の照り返しを浴びて砲手自信が燃えてしまうことがあった。


 正味の話、その照り返しの炎で燃えてしまうことはそうそうない。

 ないけれども、炎を浴びることは間違いない。

 装填手もその燃焼ガスを浴びる。

 したがって後方が開けている必要があり、遮蔽物のない海岸は射点としてうってつけだった。


 梶山少尉は海岸側の砂地に火点を定め、装填手一名を残して、二名を少し離れた内陸部に警戒として置いた。


 しかし、そこからが問題だった。

 その場所は、決起部隊の篭る操車場が見渡せるとはいえ、物陰に隠れた軽装甲車と七式歩機を狙うには足りず、さらに、後方の中戦車を狙うには距離があり過ぎた。他には噴進砲を構えた装甲歩兵の二群が見えているだけだった。


 だが、梶山が躊躇していのは一瞬だった。

 彼は、噴進砲を装備している敵歩兵が一番脅威が高いと考えた。

 他の軽装甲車や七式歩機は別の手段でも対処できるが、遮蔽物の多い操車場では、強力な火力を持った歩兵の存在は無視できない。どんな隙間にでも潜り込めるし、好きなときに致命的な一撃を加えることが可能だからだ。


 梶山少尉の構える噴進砲には、既に初弾が装填してあった。彼は照準器を目標に合わせ、躊躇することなく引き金を引いた。

 発射機握把の中に仕込まれた簡単な発電機が微弱な電気を発生させ、それが電線を伝わって砲後部の電極板と接続された砲弾にまで到達する。その電流が推進火薬に引火して猛烈な勢いで飛び出していった。


 弾頭の飛翔時間はそれほどでもなかった。

 砲弾は装甲歩兵が篭る資材に命中し、そこで炸裂した。至近距離で爆風を浴びては、装甲された歩兵といえども一溜りもなかった。

 敵兵は紅蓮の炎とともに消し飛んだ。


「次弾装填」

 梶山少尉の号令で、横に控えていた兵が即座に砲弾を装填し、後方爆風を避けるために横に退避してから梶山の肩を二度叩いた。それが装填完了の合図だった。


 照準器の画像は暗く状況は定かではないが、敵が慌てふためいている様子だけは伝わる。梶山少尉はもう一組の集団に照準を合わせ、そして引き金を引いた。


 次も同じ結果だった。歩兵が盾にしていた遮蔽物に命中した砲弾は、そこで高熱の火炎を撒き散らして付近の兵を巻き添えにした。


「射点を変える」

 同じ場所で射撃し続けていると、当然のこと位置が露見する恐れがある。

 それに撹乱目的で射撃しているのであるから、度々位置を変えて実態を把握させない工夫も必要だった。


 敵の隙を見計らい、梶山少尉は一旦後ろに下がってから横に移動し、別な場所を新たな射点にした。そこから敵情を探ると、決起部隊は海岸側から攻撃を受けたことを察知し、こちらを警戒している様子が窺えた。


「梶山聞こえるか」

 受聴器から持田技官の声が響いた。

 彼は暗視装置の付いた眼鏡で敵を監視し、その情報を知らせてくれる手筈になっている。

 だが、梶山少尉は受信して報告を受けるだけなので、返事のしようがなかった。


「聞こえなくても確認する手段がないが、今の攻撃で敵がそちらに気が付いたようだ。数人がそちらに向かっている。お前の居る場所から二時の方角になる。だが、完全にはお前見つけてないようだ。他の敵は操車場内を動かずに居るが、警戒して隠れてしまった。それ以上の動きはない。変化を発見次第、また報告する」


 それだけを伝えると、無線は一方的に切れた。

 確かに、報告のあった位置に人影らしきものが見え、一部が高台に上がっている様子が窺えた。高所に陣取られたら退避することが難しくなるので厄介だった。

 梶山少尉はその方角向けて砲を構え、敵が見えるのを待った。

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