表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】この男に甘い世界で俺は。〜男女比1:8の世界で始める美味しい学園生活〈 SNSラブコメディ〉  作者: 漂鳥
第3章 もうすぐ夏休み〜夏休み編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/167

19 家族でドライブ

 

 普段忙しい母さんが夏休みで一週間、家にいることになった。


「せっかくの夏休みだし、どこかに出かけようか?」


 朝食のときにいきなり、母さんがそう言いだした。


「どこに?」


 今日の今日じゃ、さすがに泊まりの旅行は無理だし、この年で家族で遊園地っていうのもないな。


「久しぶりにドライブとか?」


「ドライブか。いいかもね。お兄ちゃんはどう?」


「俺はいいけど、誰が運転するの?」


 当然、俺と結衣は免許を持っていない。


「それはもちろん、私よ」


 そうなんだろうな。とは薄々思っていたけど、運転するのは母さん。でも。


「ここ最近、車を運転しているのを見たことがないんだけど」


 日曜ドライバー? それはちょっと不安。


「大丈夫、大丈夫。近場だし、安全運転で行くから」



 ◇



 ということで、もう出発。


 目的地は阿ノ島(あのしま)方面。といっても、海水浴目的じゃない。その手前の室町山(むろまちやま)に用があった。


 高速道路から一般道に降りてしばらくすると、頭上に吊り下げ式のモノレールが走っている道に出た。


「今時珍しいね。こういうタイプのモノレールって」


 モノレールの下を順調に車が進んでいく。懸念していた運転技術は、どうやら大丈夫のようだ。


「着いたわよ」


 最初の目的地は、知る人ぞ知るチーズケーキのお店だ。


 小さいけど、一見すると美術館のような落ち着いた佇まいのその店は、傾斜地に建っていてた。地上はテイクアウト用の販売スペースで、半地下の地階がカフェスペースになっているんだって。


 カフェスペースの窓は、大きなガラス張りになっていて、いかにも夏らしい濃い緑が溢れる景色を見ながら、ゆっくりとお茶をすることができる。


 三人で、かなりお高めのケーキセットを頼む。自分では払うのを躊躇うような金額だけど、今日は頼もしい母親と一緒。遠慮なくご馳走になるつもり。


 出てきたのは、ベイクドタイプのチーズケーキだった。丈の高いケーキで、上から順にサワークリーム、クリームチーズ、ビスケットと、三層構造になっている。


 トウッ! まずは先っぽに縦にチョップを入れて、口に運ぶ。上から下までの総合力は、どんなものかな?


 うまっ! なにこれ!


「こんなの初めて食べた」


「凄く美味しいでしょ?」


 真ん中のクリームチーズの部分が、物凄く濃厚なんだ。なのに舌触りは驚くほどなめらか。


「すっごく美味しい。どうやってこの店を見つけたの?」


「会社でね、仕事上のお付き合いのある方が、以前、このチーズケーキをホールで持ってきて下さったことがあるの」


 上層のサワークリームが爽やかなアクセントに。そして土台のビスケットは、香ばしさを提供しながら、ホロホロしっとり。


「これ、ホールで買うといくらくらいするの?」


「通常のデコレーションケーキの4-5倍くらい?」


 うわぁ。つまり5桁以上するわけか。


「美味しいわけだね」


 高いけど、食べて納得。味も香りも凄く濃いのに、後味は軽い。パクパクいけちゃうな、これ。


「素材からして違うから、自分じゃ作れないの」


 そうだ……ゆっくり味合わなきゃ。……モグモグ。


「結星、口元にクリームついてる」


 む?


「本当だ。取ってあげるね」


 結衣が横から手を伸ばして、紙ナプキンで拭き拭きしてくれた。ちょっと恥ずい。


「結星は美味しいものを食べると、急に無言になるわよね」


「お兄ちゃん、分かりやすい」



 *



 お店を出た後は、再びドライブに戻る。もうかなり海が近い。


 歌で有名な八里ガ浜、稲町ヶ崎を通り過ぎて、阿ノ島に到着。海岸はさすがに芋洗い状態になっていたけど、島の中はそれよりはマシで、そこそこな混雑といったところ。


 冷房がきいたレストランの二階席で、目の前に広がる太平洋を眺めながら、イカ焼きを食す。なんか、いい気分。この香ばしい醤油の味がたまらない。焼き蛤にサザエのつぼ焼き。そして蟹の味噌汁。


 海の幸がてんこ盛りだ。わーい。


「お兄ちゃん、いくらなんでも食べ過ぎじゃあ」


「美味しいのは分かるけど、食べ過ぎると夕飯が入らなくなるわよ」


 夕飯?


「夕飯って何?」


「メインは肉よ。それも極上の」


 極上の肉か……それはしっかり食べたいな。でも、海の幸の焼き物も食べたい。


 うーん。


「お兄ちゃんが真剣に悩んでる」


「結星は食いしん坊だから。まあ、まだ時間はあるから、ほどほどなら……大丈夫かな?」


 ほどほど。どこまでならいけるかな? 胃袋と相談して食うか。


 その後、島内観光と近くにある水族館に行って、いよいよ夕食の時刻が近づいてきた。


 場所は、またもや室町山。


 閑静な住宅街にある、避暑地の別荘みたいな佇まい。大きな門をくぐり、玄関までの道のりを歩いて行くと、お屋敷というのが似つかわしい立派な建物が見えてきた。


 案内された室内は、中庭の芝生を眺めながら食事できる、古風なリビング風の広間で、艶のある四角い大きな木のテーブルが、ゆったりと配置されている。


 予約の際にコース料理を頼んであって、まず新鮮なお刺身がのった魚介を中心としたオードブルが出てきた。お刺身うまっ!


 そして次に出てきたのは贅沢に伊勢海老を使ったブイヤベースだ。


 黒い小ぶりな鉄鍋にドンと伊勢海老が入っていて、中には濃厚なアメリケーヌソースが満ち満ちている。このソースがやたら美味しいんだ。海老の凝縮した旨味っていうのかな。残すなんてもったいない。パンで(ぬぐ)って全部食べる。


 そしてメインのローストビーフがやってきた。


 テーブル脇に肉の大きな塊が運ばれてきて、目の前でシェフがカットしてくれる。


 焼き加減はレアだ。しっとりと肉汁が滴るピンク色。さしの入った大きな断面のローストビーフが、これまた大きなお皿にそっと広げられていく。


 ソースは、グレービーソースかポン酢。俺はグレービーソースにした。ホースラディッシュ添え。


 ひと口サイズに切って口へ運べば、極上の和牛の脂が血管内にまで染み渡る。うはっ、脳まで蕩けそうだ。旨い。ただもうそれだけ。


「お兄ちゃん、ポン酢も味見してみる?」


「いいの?」


「うん。結衣、ちょっとお腹いっぱいになってきちゃった」


「私のもちょっとお裾分け」


 わーい。肉だ肉だ。肉三昧。



 料理を堪能した後は、デザートワゴンが登場。何種類ものカラフルなケーキが載っている。


 いくつか選んでいいと言われたので、もうお腹いっぱいとか言っていた女性二人も、小さく切り分けてもらって三種類ずつケーキを食べていた。


 俺はショートケーキを一つ小さく切ってもらった。


 うん。満足。


 食後のコーヒーまで美味しい。


 ここで満腹です。


「今日は贅沢に美味しい一日だった。ご馳走様でした!」


「お母さん、ありがとう!」


 こうして、家族揃っての美味しい一日が終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

   

☆漂鳥の作品☆

   

異世界ファンタジー
代償θ〜転生に出遅れたけど、才能溢れる大貴族の嫡男に生まれたので勝ち組かもしれない 精霊に愛される転生者の物語(カクヨム )

   

ハッピーエンドラブコメ ◆ この男に甘い世界で俺は。 〜男女比1:8の世界で始める美味しい学園生活〜 カクヨム版 女性比率が大きい世界で真摯に恋愛!?(一部なろう版と異なります)

   


   

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ