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【完結】この男に甘い世界で俺は。〜男女比1:8の世界で始める美味しい学園生活〈 SNSラブコメディ〉  作者: 漂鳥
第6部 桜が咲くその時は 編

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ピーチなフラッグ

《絆大作戦「ピーチ・フラッグ杯」。本日の司会は、私、ダイちゃん。解説は特別ゲストの「期間限定三色プリン」さんにお願いしています》


 これって日記帳の声? やけにテンションが高い気がする。ゲストにプリンだって。それも三色の。


 意識がはっきりしてくると、おかしな状況に気づいた。


 眼下に広がるのは、目が醒めるような赤い砂山。階段状に盛ってあるから、ピラミッドのようにも見える。その天辺に敷かれた錦の畳。


 なぜか、その上に正座していた。「麻呂は」とか言いそうな衣装を来て。


《今回は男女混合戦です。第四段・随臣ずいしん席は、審判員席として既に埋まっています。従って、残り11席の争いになります》


《争奪戦になるのは、実質三席でしょう。女雛は全員、第二段の甘女かんにょ席を狙ってくるはずです》


《第二段は、最上段「ご成婚」に最も近いですからね。それも当然でしょう》


 数段下で、こちらを見上げて手を振っている人がいる。あれ? よく見たら、結衣と母さんじゃないか。


 俺から向かって左に母さん、右に結衣。

 二人とも小さな冠を被り、雅やかな着物を纏って、よく見ると、ピンクのハートが付いた矢と、装飾的な美しい弓を背負っている。そんな格好のせいか、いつもより凛々しく見えた。


 結衣と母さんの間は、なぜか家のダイニングになっていた。テーブルには、所狭しと料理が載っている。どれもビッグサイズだ。


 デミグラスなハンバーグ、卵ふわとろオムライス、チューリップな唐揚げ、ぷりぷり海老グラタン、粒々コーンスープ。今日って俺の誕生日だっけ? いや、夏生まれだし。


 湯気が立ってる。出来立て? めっちゃ美味しそう。あれ、食べに行きたいなぁ。

 えっ、降りちゃダメ? 食べるのは合戦が終わってから? そんなの冷めちゃうじゃん。


《麓のピーチ・ビーチに、参加選手が横一列に並びました。鼻息も荒く勢揃いです。果たして、誰がこのスカーレット・マウンテンを制覇し、ピーチ・フラッグを取れるのか。楽しみになってきましたね》


 山の麓を見ると、白い砂浜に苺ミルク色と若草色の二色のヒヨコがずらっと並んでいる。えっ、参加選手ってヒヨコなの?


《白・緑・桃色。ここから見ると、まるで雪の下から春の新芽が芽吹き、桃の花が咲いたようです》


《参加選手は、ゼッケン代わりのヒヨコスーツを身に纏っています。フラッグの奪取に成功すれば、段位に相応しいお仕着せに自動でお着替え。そういうルールです》


 あれって着ぐるみなのか。よく見れば、確かにコミカルにモディファイされている。嘴や目がリアルより大きいし、身体のバランスはやや縦長だ。

 でもあれで戦うの? 足は短いし、身体はコロコロしていて、とても動きにくそうなのに。


《各雛一斉にスタート! どっと飛び出した! 横一線、綺麗なスタートです》


《いいスタートダッシュですね。砂地にしては足が速いと思います》


《さあ先行争いですが、やはり最初は男雛がリード。緑スーツの男雛たちが、ぐんぐん出ていきます》


《逃げ争いにはならないでしょう。瞬発力の差で男雛が先行しましたが、後方から女雛が押しています。間違いなく攻めてきます》


《男雛とは気迫がまるで違う女雛、いったい誰が最初に突いてくるのでしょうか?》


《まだ分かりません。先頭集団と後方の差は、僅か三雛身。混戦と言っていいでしょう》


 か、可愛い。


 ヒヨコたちが、この砂山を目指して、ワラワラと白浜を進んでくる。でもヨチヨチ。ヒヨコ歩きで競歩だ。


《おっとここで、先行する男雛が割れました。何が起こったのか?》


《男雛が姿勢を崩していますね。勢いがある女雛が後方から押してきたようです》


《おっと! ソロ参加の女雛「ボーイ・ミーツ・ガール」だ! 突き抜けたーーーっ! 何か手に持っています。あれで、他の選手を牽制しているようです》


 苺ミルク色のヒヨコが一羽、短い足を必死で動かして、紐状のものを振り回しながら進んで来る。


《情報によれば、「ボーイ・ミーツ・ガール」選手が使用しているのは「オクトパス・ウィップ」。先端に鉢巻蛸が付いた鞭ですね》


 なぜに蛸? そして鞭。この競争って武器の使用可なの?


《各自所有のメモリアルアイテム。選手はラブ・パワーで独自進化を遂げたメモリアルアイテムを、攻撃や防御に使用することができます。あの「オクトパス・ウィップ」は、相当に攻撃力が高そうです》


 確かに。一振りするだけで、周囲のヒヨコが凪倒されている。


《しかーし。独走は許さないとばかりに、追いついてきた集団がいます。先頭「ボーイ・ミーツ・ガール」に続くのは、大本命「縁結び決死隊」の三名です》


《「縁結び決死隊」は、砂山戦に有利な強力な武器を所有しています。妨害のために早速使ってくると思いますよ》


 独走に入りかけた先頭のヒヨコの背後で、やけに大きなものが振り上げられた。それも、三つ同時に。


《きたーーーっ! 巨大なハンマー攻撃により、砂地に大穴が穿たれました! 大量の砂が吹き飛んだ! これは強い!》


《進化アイテムですね。「ウチデ・トリプルギガハンマー」。並いるライバルたちを蹴散らす範囲攻撃を得意としています》


《さすが大本命。息のあった連携攻撃です。おっと、先頭集団の混乱中に、外から追い上げです。「シスターフレンズ」の二名が来たーーっ! 果たしてダークホース、いえ、ダークチックになれるでしょうか?」


《「シスターフレンズ」のメモリアルアイテムは「モクモク・ストロー」。使い方によっては、面白いことになりそうです》


《あっという間に、先頭集団が女雛に入れ替わりました。後続勢から、更にもう一組。攻めて来たーーーっ! すごい脚です!》


《「シュライン・ツインズ」は雛脚が強いので、やはり追いついて来ましたね。メモリアルアイテムは「ベイクド・ホイル」。アイテム的には少し弱いです》


《先頭集団が、スカーレット・マウンテンを登り始めました。各所で砂山がサラサラ崩れていきます》


 えっ、ヤバくない? 山の天辺にいるのに、あんなに崩れて行ったら。


《ここで早くもキューピッド・チャレンジです。審判員によるラッキー・ハート・アローの乱れ打ち。当たれば30秒間の無敵状態になります》


《当たりどころによっては、勝敗を左右しますね》


 あ、当たった。結衣と母さんが数本ずつ放った矢が、放物線を描いて一羽のヒヨコにヒットした。


《命中です! 「ボーイ・ミーツ・ガール」に幸運が舞い降りた! ここでチャンスをものにできるか》


《これは大きいですよ。直接、第二段の甘女フラッグを狙ってくるかもしれません》


《凄い加速です。抜けた抜けた! 後続勢は追ってこれない。ぐんぐんぐんぐん差が開く。後ろからは何も来ない! なーんにも来ません!》


 矢が当たったヒヨコが、蛍光ピンク色に光りながら、凄い勢いで登ってくる。独走状態だ。


《届くか! 届くか! 届くか! 届くか!》


《いや、見て下さい。後方、「縁結び決死隊」が「ウチデ・トリプルギガハンマー」を大きく振りかぶり、ジャンピング・スマッシュの体勢です》


《ここで捨て身の三人連携スキル! 「ガールズ・ミラクルハンマー」が炸裂! 決まったーーーっ!》


 一瞬、何が起こったのか分からなかった。目の前が真っ赤になって、大量の砂が降ってくる。


《「ボーイ・ミーツ・ガール」惜しくもゴールインならず! 残念、差し切り勝ちとはいきませんでした》


 うわっぷ。砂山が崩れてる。えっ、結衣と母さんは?


《大本命「縁結び決死隊」の進化アイテムが強力過ぎましたね。砂山総崩れ。大惨事です》


《もの凄いレースでした。道連れエンドで実況終了です。「期間限定三色プリン」さん、本日は解説ありがとうございました。では皆さん、いつの日かまたお会いしましょう!》


 二人の安全を確認したいのに! なんなのこれ!


 *


「見て見て、お兄ちゃん。できたよ! ありゃ? 寝ちゃってる」


「あれ? 結衣、大丈夫だった? 母さんは ……って、えっと、なんだっけ?」


「やだ。寝ぼけてる。コタツもそろそろしまわなきゃね」


 リビングを占拠する七段飾り。華やかでいいけど、コタツスペースが圧迫されてかなり厳しい。もうすぐさよならのコタツに別れを惜しんでたら、そのまま寝ちゃったのか。


「はい。菱餅風三色プリン。沢山作ったから食べてね」

「へえ、上手にできてるね」


 桃の節句ということで、白・ピンク・緑の三層プリンを、牛乳パックを型にして作ったらしい。

 ゼラチンを使っているので、プリンというよりババロアだけど、そこはあえて指摘しない。


 三色団子ならぬ三色プリンは、ミルク&苺&抹茶味。ゼラチン特有の柔らかさがあって、甘くてほんのり苦かった。



※ 夢ならではのカオス。オチに深い意味はないです。

女雛のニックネームについては、本編の中にヒントがあります。

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